2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730570
|
Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health, Japan |
Principal Investigator |
久保 智英 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 作業条件適応研究グループ, 研究員 (80464569)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 介護労働 / メンタルヘルス / 疲労 / 睡眠 / 情動負担 / 交代勤務 / 夜勤 / 感情労働 |
Research Abstract |
我が国の高齢者人口は、他の先進国に比して、急速に増加し続けている。そのため、高齢者の介護の問題に対する準備期間を十分にとることができずに高齢化社会へと変化した。介護事業所を対象にした大規模調査(介護労働安定センター「平成20年度 介護労働実態調査結果について」)によれば、我が国の介護労働は、離職率が高く、低賃金で、肉体的にも精神的にも仕事がキツイと回答する者が4割、休暇や休憩がとりにくいと訴える者は3割にも上ることが明らかにされている。さらに、他国ではあまり例を見ない16時間もの長時間夜勤を全体の約4割程度の職場で採用しているという現状もある。 今後、ますます高齢化社会が進むとともに介護労働への社会的ニーズは高まっていくことが予想される。そこで彼らを取り巻く労働環境の改善を念頭に、介護労働による疲労やストレスに対する対策志向的な研究が現在、求められている。本研究では、交代勤務に従事する介護労働者を対象にして、彼らに対するインタビュー調査や睡眠観察調査などの手法をもって、1)介護労働特有の職業性ストレス要因の抽出、2)介護労働による職業性ストレスが睡眠の質および生活パターンに及ぼす影響の明確化を目的とする。 現時点においての進捗状況としては、睡眠観察調査の実施に向けての予備的な検討が整いつつある段階である。具体的には、平成23年度において、本研究でのプライマリーアウトカムとなる睡眠の質と、他覚的な疲労の測定機器として購入した最新の「反応時間検査の機能の付いた腕時計型活動量計」の使い方について検討を重ねた。くわえて、実際に介護労働にかかわる者から本調査の内容についての意見聴取や、睡眠観察調査に協力可能な介護事業所の探索および交渉を行っていた。なお、調査協力先については全面的な協力が得られる事業所を見つけることができたので、平成24年度以降の調査の目途がついたところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画としては、交付申請書に記したように、現場で働く介護労働者にインタビュー調査を実施して、介護労働者特有の職業性ストレス要因に関する調査票を開発することであった。これに関しては、介護労働現場で働く介護労働者や、その施設を運営する者、あるいは看護・介護にかかわる専門家などから、介護労働現場における問題の改善を念頭においた「現場の生きた声」を収集することができた。それらの結果を反映させ、現在、平成24年度以降に実施予定としている睡眠観察調査の実施の準備、たとえば、調査項目の選定や具体的な調査計画、データ解析方法の検討など、を進めている。また、平成23年度は、上述の「研究実績の概要」で述べた通り、調査協力先となる事業所を探していたが、全面的に協力の得られる事業所が見つかった。それにより、今後は事業所と調査実施に関する詳細な打合せを行い、平成24年度以降のスムーズな調査実施へとつなげることを目指している。くわえて、初年度の平成23年度に、本研究のプライマリーアウトカムとなる指標の測定機器の使用方法などについても検討を重ね、その使用法や解析法について研究代表者が習熟したため、今後の調査の実施、データ収集がより一層、円滑になると考えている。昨年3月11日の大震災や、それ伴う科研費交付の遅延などの影響を受けて、当初、平成23年度の研究遂行は計画の3割も進行できないと危惧していたが、上述した理由から、本申請者は本研究の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は平成24年度と平成25年度の2年間で終了する。平成23年度の位置づけとしては、上述のように、睡眠観察調査の円滑な実施のための準備期間としてあててきた。そして平成24年度以降は、睡眠観察調査の実施に重きをおくことを考えている。まず平成24年度では、調査協力先の事業所との詳しい打合せ、参加者の募集、調査の実施が主なタスクとなる。さらに、調査実施は、所属先である労働安全衛生総合研究所の倫理審査を受けることも考え、平成24年度の後半を計画している。また、それにともない、平成23年度で得られた介護労働にかかわる人々の現場の声を反映させた調査項目の選定と、それによる調査票の開発を行う。この作業は少なくとも平成24年度の前半に終了させる予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費の使用計画は以下の3つがメインになると考えている。1つは調査協力が得られた介護事業所での調査実施にかかる費用、つまり調査参加者や調査協力者などへの謝金である。これが大部分を占めると考えられる。次に、事業所との打合せや研究成果の発表などにかかる旅費である。最後に、調査票の印刷やその他の文具などの雑費である。なお、平成24年度において、調査実施可能な調査参加者数は保有している測定機器の数や、対象先となる事業所の職員数との関係上から、一度に多くても数名が限度である。そのため、最終年度である平成25年度においては、調査参加者数を増やし、得られた結果の信頼性を深めるために研究費を使用することを考えている。
|