2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730578
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内田 由紀子 京都大学, こころの未来研究センター, 准教授 (60411831)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交流 / 文化 / アメリカ / 対人関係 / 幸福感 / 若者 / 適応感 |
Research Abstract |
本研究では若者の対人関係についての認知と感情、不幸せ感や悲しみ、怒りなどの「負の感情」への対処方法を検討し、心の健康と文化的適応に関連する諸分野への貢献を目指している。さらに、日本文化の中で中心的に見られる現象だけではなく、一般的傾向とは異なる行動様式や価値基準を持つ若者たちを対象に調査を行うことで、日本文化のグローバリゼーションや経済的な停滞による若者の心の変化を検証している。 平成23年度には特にグローバリゼーションが日本の若者の適応感に与える影響について、実証的研究ならびに調査研究を行った。具体的には、若者のニート・ひきこもり傾向について精査し、それらが(1)動機付け(2)コミュニケーション場面での認知に与える影響についてそれぞれ実証的研究を行った。ニート・ひきこもり傾向が高い大学生は、就職活動など社会との統合が求められる局面において特に自己の不全を起こしやすいこと(Noraakkunkit & Uchida, 2012)、ニート・ひきこもり傾向のリスクが高い若者は他者の表情認知において、周辺情報への注意の程度が過度に高いことなどを検討した(矢野・内田・増田, 2012)。 さらには、グローバリゼーションによる個人主義や個人の成果主義の導入が日本社会と心の適応感の変容に関与していることを示す検討も行った。日米大学生に個人達成志向的な状況に置かれたときを想起させ、幸福感や対人関係を評価してもらった。すると日本の学生は、個人達成志向的で競争的な状況に置かれると、他者からのサポートが減じられ、幸福感が下がることを予測することが明らかにされた。また、日本では個人達成志向的傾向が強い人々ではより幸福感が低いことも示された(内田・荻原, 2012)。 幸福感研究においては日米以外に、ベルギーやドイツとの共同研究の枠組み構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では現代の若者の心の変化を解明するために、社会・文化的要因を考慮に入れて、「『心』の変容」という時間軸、「現代日本と他の文化との差異や共通性」という空間軸の双方から社会と心のあり方との関係を明らかにすることを目的としていた。平成23年度には特に空間軸において、日米のみならずヨーロッパでの研究基盤を構築することができたこと、さらにはグローバリゼーションの影響という、時間軸を入れた分析を直接的に実施するような実験的検討を行い、一定の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画として、今後大学生のみならず、高校生・企業における一般社会人・無職者のデータを収集し、グローバリゼーションが与える影響についてより詳細に検討を行う予定である。具体的には企業での主観的幸福感や健康指標、価値観、対人関係の指標を収集すると同時に、生理学的指標も得て、大規模な調査研究を行う予定である。このための枠組みは既に平成23年度より構築しつつあり、平成24年度中には実施となる予定である。また、感情経験が及ぼす景況についての研究を深める。具体的にはルーヴェン大学Batja Mesuquita教授、ドイツのコンスタンツ大学のGisela Trommsdorff教授の協力のもと、日本とドイツ、ベルギーでの負の感情の制御に関するを実験研究を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際比較調査実施のための研究調査旅費の使用の実施、さらには国内外での研究成果の発表にかかる経費としての支出、そして実験と調査実施にかかる直接的な費用(謝金や印刷費用、郵送費用など)を支出する予定である。
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[Book] Marginalized Japanese youth in post-industrial Japan: Motivational patterns, self-perceptions, and the structural foundations of shifting values. In Trommsdorff, G., & Chen, X. (Eds). Values, Religion, and Culture in Adolescent Development2012
Author(s)
Norasakkunkit, V., & Uchida, Y.
Total Pages
未定
Publisher
Cambridge University Press