2011 Fiscal Year Research-status Report
大人の甘えと援助要請が個人・対人・集団に与える効果
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23730588
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
新谷 優 法政大学, グローバル教養学部, 准教授 (20511281)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 甘え / 文化 / 援助要請 / 対人関係 |
Research Abstract |
本研究の目的の一つは、「甘え」と「援助要請」との概念的な違いを明らかにすることである。助けを求める人(Aさん)との親しさ(親しい友人・ただの知人)とその人のコントロール感(やろうと思えば自分でできたが気が進まないので助けを求めてきた・怪我のせいでどうしても自分でできないので助けを求めてきた)を操作した4種類のシナリオを作成し、大学生131名を対象にシナリオ実験を行った。頼みごとをどのくらい甘えだと思うか評定させたところ、頼みごとをする人のコントロール感が低い条件よりも高い条件で、甘えを感じることが明らかになった。また、頼みごとをする人のコントロール感を高く知覚すればするほど、その頼みごとを甘えであると知覚することも明らかになった。さらに、コントロール感が高い条件(甘え)では、親しい相手が頼みごとをするときの方が、親しくない相手が頼みごとをするときよりも、頼みごとに応じる可能性が高くなるのに対し、コントロール感が低い条件(援助要請)では、頼みごとをする人との親しさは、頼みごとに応じる可能性に影響しないことがわかった。以上の結果から、甘えと援助要請の主な相違点は、頼みごとをする人のコントロール感の有無と、関係性の親しさが頼みごとの受容に影響するか否か、の2点であると結論づけた。甘えと援助要請を区別することで、これまで援助研究で見落とされてきた甘え特有の援助行動のダイナミックスを提唱できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画よりも、現在の達成度はやや遅れている。本来なら、質問紙実験の結果をふまえて、実験室実験も行う予定であったが、震災の影響でリサーチアシスタントと実験参加者の募集が遅れたため、本年度中に実施できなかった。その代り、当初の予定になかったアメリカで質問紙実験ができた。現在そのデータを分析中である。「甘え」という概念は、日本文化特有であると言われているが、甘えという現象はアメリカでも存在することを申請者はこれまでの研究で明らかにしている。アメリカでシナリオ実験の追試ができるということは、甘えを援助行動の研究に関連づける上で、非常に意義がある。また、平成24年度に実施予定の社会的ネットワーク縦断調査の準備も整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、当初の計画どおり、甘えが個人・対人関係・集団関係に与える影響を検討するために、大学一年生の通年のクラスに対し、4月・7月・12月の三回にわたり社会的ネットワーク縦断調査を実施する。一クラスでのみ実施する予定であったが、ドロップアウトする参加者が多数出てしまうと分析ができなくなってしまうので、そのリスクを低減させるために、二クラスでデータを集めることにした。さらに、平成25年度に計画していたペア調査も、計画を早めて同時に実施することにした。社会的ネットワーク縦断調査・ペア調査のいずれも、甘えの自己評価と甘えの対象者からの評価を比較検討するため、両調査で同じ結果が得られれば、一つの論文をまとめることができると考えたためである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度への繰越金は270,472円ある。4~7月にかけて実験を実施する予定であったが、震災の影響でリサーチ・アシスタントと実験参加者の募集が遅れ、実施することができなかった。リサーチ・アシスタントと実験参加者の謝金が未使用のままである。次年度の研究使用計画は以下のとおりである。謝金:社会的ネットワーク縦断調査では、二クラス(各22名)に対し、1人5,000円の謝金を支払う予定である(計220,000円)。謝金としては高額であるが、計3回の調査でドロップアウトをできるだけ少なくするためやむを得ない。ペア調査の謝金は、1人1,000円で、60ペアに支払う(計120,000円)。リサーチ・アシスタントへの謝金は、時給1,200円で150時間分を支払う(計180,000円)。旅費:海外での学会参加(270,000円)と国内での学会参加(80,000円)を行う(計350,000円)。
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