2012 Fiscal Year Research-status Report
上司-部下間の信頼関係の構築および崩壊からの修復・再生に有効な条件解明の研究
Project/Area Number |
23730593
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山浦 一保 立命館大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (80405141)
|
Keywords | 上司と部下の関係性 / 信頼の構築と崩壊 / 修復方略 / 赦し |
Research Abstract |
本年度は、企業対象のアンケート調査の設計と定量分析、およびスポーツチーム対象に介入研究を行った。 前年度の成果(主に、定性分析の結果)、および関連する先行研究を踏まえて、信頼関係の崩壊に至る特徴を明らかにするために、定量的に把握する尺度の検討を行った。アンケート調査票の構成は、信頼崩壊の原因、事態の深刻さ、そこで試みた修復方法に関する内容であった。一般企業・各種組織に所属する幅広い年代を対象に、web調査を実施した。 分析の結果、信頼崩壊の原因については、網羅的に把握できる項目を設定することができた。事態の深刻さ、および修復方法の尺度については、それぞれ信頼性と妥当性を確保することができた。 また、信頼関係が修復されると、当事者となった部下や上司に有益であるのか、それはどのような心理的側面(職務遂行の効力感の変化、精神衛生、POMSの活気)でみられるのかについて検討した。当事者の立場(上司の立場・部下の立場)×関係修復の様相(現在も悪化・現在は修復)×環境要因(相手と現在も同じ部署・現在は異なる部署)の3要因分散分析を行った。その結果、それぞれの指標に共通して、当事者の立場×関係修復の様相の交互作用が有意であった。悪化したままに比べて、修復できたときにポジティブな心理状態になる(その差異が大きかった)のは、上司の立場で信頼崩壊を経験した者よりも部下の立場で経験した者であった。また、上司、部下にかかわらず、異なる部署になった者の方が、同じ部署のままの者よりもポジティブな心理状態にあることも示された。これらのことは、ECP(20130710)で発表する予定である。 さらに、スポーツチームでのケーススタディを縦断的に介入および調査した。Scheinのプロセス・コンサルテーションに依拠して実施した結果、関係性の修復に関しては、一定の効果をあげることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
より詳細な分析を可能にするためには、今後もデータの追加が必要であると考えているが、企業対象にしたアンケート・尺度の作成、準備ができた。また、スポーツチームを対象に、関係性の修復のケーススタディを行うこともでき、おおむね順調に進んでいると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の検討課題は、(1)信頼関係が一度崩壊した状態から修復するケースの特徴、および(2)その特徴を踏まえて、信頼関係の修復に向かうメカニズムについて検討を行う。なお、これらの検討に際しては、企業およびスポーツチームを対象に調査した定量データを用いる。 具体的な分析視点の一つは、関係が修復したケースとそうでないケースを抽出し、上司-部下の信頼関係が崩壊する原因、修復に対する欲求や修復可能性の推測の程度、修復方法、そして、関係が崩壊する前における信頼構築(信頼の事前担保)の程度を比較検討する。 加えて、ここで得られた結果をもとに、修復に影響を及ぼしうる要因を抽出し、修復に向かう心理プロセスに関するLewicki & Bunker(1996)の仮説モデルを精緻化する。 もう一つの分析視点は、この仮説モデルを実証することである。これらの分析を通して、修復の可能性を高める条件を解明する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「該当なし」
|
Research Products
(5 results)