2011 Fiscal Year Research-status Report
なぜ非行集団に同一化するのか:集団内関係と集団間関係を基盤とした統合モデルの構築
Project/Area Number |
23730594
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
中川 知宏 近畿大学, 社会学部, 講師 (80438556)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 非行集団 / 集団同一化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、なぜ非行集団に同一化するのかということを集団内関係と集団間関係の観点から包括的に説明することである。そこで、初年度は調査に使用する尺度を整理した。ここでは、特に集団差別と集団境界透過性の測定方法について言及する。 本研究では、非行集団への同一化を規定する要因の一つに集団差別を仮定している。この概念は拒絶-同一化モデルに基づいており、特定のマイノリティ(本研究では、非行集団)に所属していることによってマジョリティから受ける差別と定義している。この概念定義に即して、Branscombe et al. (1999) の項目を参照しながら項目を作成した。まず、非行集団に対して差別を向ける可能性があるマジョリティとして学校(教師・同級生)、警察、近隣住民の3領域を仮定した。これらの領域は、少年らが日常生活を送るなかで相対的に接触頻度が高く、何らかの差別的な扱いをする可能性があると考えることができる。具体的には、「仲間との付き合いがあったため、以下のような扱いを受けたことがありますか」と教示を設け、それ以降の質問項目で具体的な差別経験(例:良くない噂をされる)の有無に関する回答を求める。さらに、これらの経験の有無に加え、差別経験が(あった場合)回答者自身にとってどの程度、嫌悪的なものであったかについて回答を求める。 集団境界透過性は、個人が所属集団以外に移動できる主観的な可能性と定義している。先行研究では、この概念は直接測定されるというよりも実験的操作によって生み出される実験条件として扱われていた。これを項目で測定するために、直接的に移動可能性をたずねる単一の項目(あなたは自分の所グループ以外に移れそうなグループがありましたか)と移動可能性の程度を間接的に測定する複数の項目(例:グループ以外の人と遊んでいると、仲間から嫌な顔をされることがりましたか)の双方を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、非行集団への同一化過程を集団間関係(集団差別)の観点から検討する予定であった。調査対象者は非行少年を想定しており、専門施設からデータを取得する予定であったが、諸般の事情により取得が困難となった。そのため、現段階でデータ取得ができていない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
専門施設からのデータ取得が困難となったため、今後は代替手段として中学生または高校生を対象とする。中高生の調査回答者を獲得するにあたっては、リサーチ会社に依頼し、2段階調査を実施する予定である。具体的には、1回目の調査にて中高生500名ほどに自己報告型の集団非行行為尺度への回答を求め、関与頻度が上位30%程度の回答者を相対的に反社会性の高い集団に所属している少年として選定する。その後の調査(2回目)にて、上位30%程度の回答者をターゲットに本調査を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度は、中高生を調査対象者として、リサーチ会社に調査を依頼する予定である。そのため、これにかかる費用が研究費の大半を占めることが予想される。
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