2012 Fiscal Year Research-status Report
なぜ非行集団に同一化するのか:集団内関係と集団間関係を基盤とした統合モデルの構築
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23730594
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
中川 知宏 近畿大学, 社会学部, 講師 (80438556)
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Keywords | 集団同一化 / 非行集団 / 集団境界透過性 / 差別 |
Research Abstract |
本研究の目的は、なぜ非行集団に同一化するのかということを集団内関係と集団間関係の観点から包括的に説明することである。当初の計画では、矯正施設に入所している少年を対象にデータ取得する予定であった。しかし、これが困難となったため代替手段として高校生の中から相対的に非行性が強い者を選定し、分析対象とすることにした。 そこで、オンライン調査会社(gooリサーチ)へ調査を依頼し、高校生412名のデータを得た。この中から、相対的に反社会性が強い高校生を選定するため、この一年間に関与した逸脱行動を測定した。調査時点から過去にさかのぼって一年間に何らかの逸脱行動に全く関与していない回答者は275名(66.7%)、一回以上関与した者は137名(33.3%)であった。これらの結果をもとに、後者の群を相対的に反社会性が強い者として分析に用いることもできるが、関与した逸脱行動の頻度にはかなりのばらつきがある。具体的には、なんらかの逸脱行動に1-2回関与した者が137名の内52名(38.0%)であり、3分の1以上を占めているが、数回程度という逸脱行為への関与頻度からは必ずしも反社会性が強いとは言えない。そこで、代替指標としてGrasmick et al.(1993)の低自己統制尺度を用いる。この尺度は犯罪や非行を強く予測することが知られており、これを用いる(または、逸脱行為の関与頻度と併用する)ことによって相対的に反社会性が強い群を弁別することができるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オンライン調査を通じて高校生を対象にデータを収集することができたので、相対的に反社会性の強い群を同定することができる。最終年度では、こうした群をベースに当初予定していた理論モデルを分析することが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、反社会性の強い集団に同一化するのはなぜかということを集団間関係と集団内関係の両視点から統合的に分析するものである。集団間関係については、集団への差別が認知的同一化を促し、これがアイデンティティに関する不確実性を低減すると仮定している。一方、集団内関係については、仲間からの好意や援助のような集団報酬が情緒的同一化を促し、これが自尊心を高めると仮定した。これらは相互に独立したモデルではなく、認知的同一化と情緒的同一化を媒介変数とした多重媒介モデルである。したがって、今後はこの理論モデルをPreacher and Hayes(2008)が提唱した方法(情緒的同一化と認知的同一化を媒介変数とする各間接効果のコントラストを検定)を用いて分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、文献や資料を整理するための消耗品費、研究結果を発表するための学会旅費などに使用する予定である。
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