2013 Fiscal Year Annual Research Report
なぜ非行集団に同一化するのか:集団内関係と集団間関係を基盤とした統合モデルの構築
Project/Area Number |
23730594
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
中川 知宏 近畿大学, 社会学部, 講師 (80438556)
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Keywords | 非行集団 / 差別 / 集団境界透過性 / 集団報酬 |
Research Abstract |
本研究では、非行集団に所属する少年を対象に以下の仮説を検証した。(1)所属集団に対する差別が集団同一化を促すが、この効果は集団境界透過性(以下、透過性)によって調整されるだろう。具体的には、所属集団の仲間以外に付き合える仲間がいないと感じている(透過性が低い)少年は、集団に所属していることで差別的な扱いを受けるほど集団同一化が強くなるだろう。(2)所属集団への差別は集団同一化の中でも認知的次元を強め、これが不確実性(自分がどのような人間であるのかということに関する不明瞭さ)を低減するだろう。また、所属集団の成員から提供される集団報酬(仲間との相互作用過程で得られる心理的報酬)は情緒的次元を強め、これが少年の自尊心を高めるだろう。 以上の仮説を検討するにあたり、インターネット調査会社を通じてデータを収集した。調査対象者は過去一年間に逸脱行動に1回以上関与した者137名(男性57名、女性80名)を分析対象にした。 仮説1を検討するため、所属集団に対する差別と透過性を独立変数、集団同一化(認知的次元と情緒的次元)を従属変数として、階層的重回帰分析を実施した。分析の結果、透過性を強く知覚している少年は、仲間といることで差別を受けたと感じるほど集団同一化が弱くなった。交互作用は有意であったが、仮説を支持するものではなかった。次に、仮説2を検討するため媒介分析を実施した。分析の結果、自尊心を従属変数としたモデルでは、直接的に集団報酬が自尊心を高め、差別が自尊心を低めていた。また、不確実性を従属変数としたモデルでは、集団報酬が直接的に不確実性を低めた。しかしながら、両モデルとともに間接効果は有意ではなかった。 これらの結果は仮説を支持するものではなく、これに関する考察は研究実施報告書にて詳述する。
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