2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730599
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Research Institution | 公益財団法人労働科学研究所 |
Principal Investigator |
余村 朋樹 公益財団法人労働科学研究所, 研究部, 主任研究員 (80390772)
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Keywords | 産業組織 / 繁忙感 / 忙しさ |
Research Abstract |
産業場面での事故は多くの要因が複雑に絡みあって発生していると考えられるが,当事者である現場従業員は,繁忙感を一因として報告するケースが見られる。これまでにも,過度の時間圧と手順書からの逸脱や記憶の短期的喪失の増加との関連や,繁忙感と教育・医療の現場におけるバーンアウトやメンタルヘルスの問題との関連が指摘されている。しかし,この繁忙感とヒューマン・エラーやストレス反応との関係を明らかにする実証的な研究は少ない。そこで本研究は,産業組織において,繁忙感はどのようなリスクを発生させる,もしくは高めるのかを明らかにすることを目的とした。 まず,繁忙感によって発生もしくは高められるリスク要因の探索のために,実際の産業組織において,面接調査,事例調査,さらに安全活動の阻害要因調査を行った。これらの調査の結果,繁忙感が高いために,1つのことに集中して取りかかれない,手戻り作業が増える,抱えている仕事から逃げたく感じる,現場設備にリスクを感じても対策案作りなどの負担を考えて対処を諦めたり先延ばしする,予定外の状況にも関わらず確認や再打ち合わせを省略する,合理化する,判断を回避する,といった意見や事例が確認できた。 続いて,これら結果を踏まえ,繁忙感が影響を与えると推定されるリスク項目を作成し,繁忙感と繁忙感要因を含めた質問紙調査を行った。その結果,集中できない等,繁忙感との関連が示唆されたものがある一方,ワークモチベーションなど,繁忙感と関連が見いだせないものもあった。 今後,データのさらなる解析を行う必要がある。また,繁忙感が影響を及ぼすリスクの探索的調査は今後も継続して行うことが求められる。特に,幅広い組織や産業で調査を行うことが必要である。さらに,他の指標との関連についての調査や,実験的研究による因果関係の解明も求められる。
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