2011 Fiscal Year Research-status Report
適応に寄与する援助要請行動を促進する介入法の有効性の検討
Project/Area Number |
23730601
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
本田 真大 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (40579140)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 援助要請 / 被援助志向性 / 援助評価 / ソーシャルサポート / ソーシャルスキルトレーニング / 認知行動療法 / 発達臨床心理学 / 学校心理学 |
Research Abstract |
今年度の研究の目的は,応募者が開発した「適応の改善に寄与する援助要請行動を促進する介入法(以下,介入法)」の介入効果に影響を与える要因を明らかにして介入法の改良を行うことであった(【研究1】) 。 まず,大学生に介入法を実施し効果を検討した(【研究1-1】)。介入群は32名,統制群は34名であった。介入は90分×1回で実施し,事前調査の1週間後に介入を行い,介入1週間後に事後調査を実施した。しかし,介入効果は統制群と比較して援助要請スキル,ソーシャルサポート提供スキル,ストレス反応,被援助志向性のいずれにも認められなかった。本研究と先行研究との大きな違いは介入法を実施した集団の特性にあることが考察された。すなわち,先行研究では中学生,高校生などの学級集団に介入を行っており,その集団は「相談相手として選択しうる人間関係のある集団」であったと考えられる。一方,本研究では同じ科目を履修した学生であり,面識のない学生もいたと考えられる。このような集団の特性が介入効果に影響を与える1つの要因であったと推測される。 次に,ストレス反応に対しても介入効果が得られなかったため,介入効果を高める要因を検討するために,大学生130名を対象に質問紙調査を行った(【研究1-2】)。Time1に被援助志向性,Time2(2週間後)にストレス反応を尋ねた。その結果,Time2のストレス反応を予測する変数は被援助志向性の下位尺度のうち「被援助に対する懸念や抵抗感の低さ」であり,この側面の変容がストレス反応の改善に有効であることが示唆された。 初年度の研究成果の一部を日本心理学会第75回大会,及び第7回援助要請研究会にて発表し,意見を仰いだ。また,介入効果をより高めるために介入法が改良された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に実施した研究は結果としては介入効果が得られなかったが,その理由を考察すること,及び研究を1つ追加したことから介入法の特徴及び介入効果に影響を与える要因について理解を深めることができた。また,研究成果の発表により,介入法に関する理解を深め,介入法の改良も行った。これらのことから,今年度の研究遂行に向けて順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究の目的である,改良した介入法(以下,介入法改良版)の効果を検証する。その際に,前年度の研究で明らかになった以下の2点を重視する。 第1に,介入法改良版を使用する。具体的な改良点は,ソーシャルサポート提供スキル,援助要請スキルのトレーニングの前に実施する「援助評価の心理教育」の部分をより詳細に作成した。その改良に伴い,介入に要する時間は90分から135分(45分×3回,もしくは90分×1回+45分×1回)とする予定である。さらに,スキルトレーニングのホームワークも作成し,介入時に実施することを予定している。この点は今年度作成する予定である。 第2に,介入を行う集団の選択である。初年度の研究では同じ科目を履修した学生集団を対象に介入研究を実施したが,介入効果を高めるためには相談相手として選択しうる人間関係のある集団が重要であると考えられる。したがって,介入群,統制群ともに同じ所属・学年の集団を選択し,介入効果を検証する。 介入効果は初年度の介入研究と同様に,援助要請スキル,ソーシャルサポート提供スキル,ストレス反応,被援助志向性を用いる。加えて,介入効果に影響を与える要因として集団の特性を考慮する。具体的には集団の特性を測定する尺度を使用し,その特性が介入効果に与える影響を検討する。具体的な変数は今後検討する予定である。また,介入効果を3ヵ月後,可能であれば6ヵ月後にわたって検証する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として,介入テキストの作成に必要な消耗品(プリンターインクカートリッジ,白色用紙,など)の不足分を購入する。 旅費として,援助要請・被援助志向性,認知行動療法,学校心理学に関する研究発表が行われる学会に参加して資料を収集し,今年度の介入研究の実施の準備,および介入法の更なる改良のための準備とする。具体的には,日本コミュニティ心理学会(北海道),日本行動療法学会(京都),日本認知療法学会(東京),日本学校心理学会(高知),などを予定している。また,日本心理学会(東京)では援助要請に関するワークショップを企画しており,本研究と関連する内容を議論する予定である。 人件費・謝金について,使用予定はないが,介入研究の準備,実施,データの分析に関連して大学生・大学院生の補助を必要とする場合,謝金として支払う。 なお,前年度の残金の14468円を含めて今年度使用する計画である。
|