2012 Fiscal Year Research-status Report
視線計測による教材読解初期の動機づけ向上プロセスのモデル化
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23730609
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
島田 英昭 信州大学, 教育学部, 准教授 (20467195)
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Keywords | わかりやすさ / マニュアル / 視線 / 防災 / 動機づけ |
Research Abstract |
どんなによい教材でも、利用されなければ意味がない。従来の教材研究が「教材のわかりやすさ」を対象としてきたことに対し、応募者は「教材を使ってみようと思うプロセス」、つまり、読解初期の動機づけの向上プロセスを明らかにすることを目指している。 本年度は、(1)視線計測環境の整備、(2)読解プロセス全体にわたる視線計測と分析、(3)実験プログラムの調整の3点を行った。 (1)視線計測環境の整備については、昨年度に環境整備ができたが、研究室の耐震工事による一時移転により、再度の調整が必要になった。一時移転中に(2)と(3)を実施し、工事後の再移転を経て、最終年度に研究課題が遂行できる準備を整えた。 (2)読解プロセス全体にわたる視線計測と分析については、非連続型テキストを含む説明文の読解を事例として研究を実施した。状況モデルの構築を求められる場合には後半で非連続型テキストを見る比重を増やす読解方略を用いており、非連続型テキストを重視した表象を形成していることなどを明らかにした。成果については、紀要論文として投稿中であり、最終年度の学会発表を予定している。当初予定では、読解の極めて初期における非連続型テキストの読解プロセスを明らかにする予定であったが、その比較対象として、先行研究が多いスパンの読解プロセスに着目した研究を行った。ここでの視線データの分析ノウハウは、最終年度の課題に生かされる。 (3)実験プログラムの調整については、実験PCの入れ替えにともない、実験プログラムの調整を行い、当初予定の実験が実施できる環境を整えた。 最終年度では、読解初期の10秒程度までにおける読解プロセスについて、(2)の知見や先行研究と比較しながら、非連続型テキストの処理に着目した研究を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定では、読解初期の視線計測のデータを本年度までに取得し、認知科学的モデル化を最終年度に実施する予定であった。しかし、研究室の一時移転による作業量増加と、読解プロセス全体の視線計測と分析を本研究に先立って行った方がよいとの判断から、読解初期の視線計測のデータを来年度に取得することとした。以上の進展状況の中で、研究がおおむね順調に進展しているとした理由は、以下の2点である。(1)認知科学的モデル化については当初から遅れを想定し、本研究後の課題とすることを見越していたため。(2)当初予定にはなかったが、昨年度と本年度において一定の学術的成果を挙げることができ、最終年度の研究に生かせるため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では、読解初期の視線計測を実施済みの予定であったが、達成できなかった。この点は、最終年度の最優先課題とする。 一方で、読解プロセス全体の視線計測と分析を本研究に先立って実施した結果、読解プロセスにおける非連続型テキストの役割について、一定の学術的成果を挙げることができた。非連続型テキストは、PISA型学力などで注目がなされているため、当初計画に加え、この点も検証していきたいと考えている。また、読解プロセス全体の検討を並行して行うことによって、当初計画の読解初期の特徴が明確に明らかになると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度への繰り越しについては、次の3点の理由で生じた。 (1)人件費を用いてデータ収集を行う予定であったが、読解初期の視線計測を次年度にまわしたためである。(2)初年度、当初計画よりも備品が安く購入できたためである。(3)出張予定を繰り下げたためである。 上記の繰り越し金と平成25年度の資金を合わせ、以下のように執行する予定である。 (a)上記(1)、(3)の当該作業に対する経費。(b)コンピューター、ソフトウェア、資料など、研究実施に必要な物品の購入による研究実施環境の整備。
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