2011 Fiscal Year Research-status Report
自己愛的青年の社会適応を促す要因の解明と心理教育プログラムの開発
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23730611
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
中山 留美子 三重大学, 高等教育創造開発センター, 講師 (60555506)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 自己愛 / 対人適応 / 共同作業場面 / 対人態度 |
Research Abstract |
本年度は、質問紙調査による基礎的なデータ収集を行い、自己愛のレベルにより対人適応の違いがみられるようになる時期(研究1)および自己愛と対人態度、共同作業に対する態度の関連(研究2)についての検討を行った。対人適応の変化(研究1)に関して、大学1年生150名を対象に4月中旬、6月初旬、7月下旬の追跡データを収集し、平均値±1SDという基準で対象者の自己愛のレベルを3群に分けて分析した。その結果、対人適応の違いが明確になる時期は6月調査から7月調査の間であることが明らかになり、この傾向は自己愛における誇大性、過敏性の2側面のうち、誇大性に関して示される傾向であることも明らかになった。この結果は先行研究の結果とも重なり、出会いから2か月以降4か月の時点で、自己愛的誇大性を持つ学生が、対人関係における居心地の悪さを感じていることがうかがえた。また、対人態度や共同作業に対する態度(研究2)に関しては、大学生300名を対象に、自由記述や尺度を用いた検討を行った。その結果、自己愛といくつかの態度や思考スタイルが関連することが示され、特徴的な態度が対人適応の変化にも関わっていることが推測された。なお、本年度には次年度に行う観察調査の予備調査を予定していたが、当初の予定よりも研究開始時期が遅れたことや、観察調査の対象となる場面を自然(教室)場面での観察からできる限り統制された状況(実験室)での観察へと変更したことから、実施しなかった。本年度は、実験室での観察調査の計画の具体化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は質問紙調査を中心とした調査計画を立案していたが、計画していた調査内容については概ね実施を終了し、次年度の調査計画の具体化にもつなげられた。しかし、本年度に予定していた、次年度の観察調査のための準備に関しては、計画の変更や遅れが出た。観察調査の遅れに関して、具体的には、申請書で研究開始当初に予定していた予備観察を行わず、それに関する予算執行がなかった。これは、2つの原因による。1つは交付決定の時期が遅れたことにより、ビデオカメラや調査協力者の募集等、調査の準備が間に合わなかったことによる。もう1つの原因として、調査事態の変更を行った。当初は教室での観察を予定ていたが、音声のノイズが多いことや、対象とするグループの取り組み内容に多様性があることから、実験室場面で課題を統一しての観察調査とする計画に変更した点がある。この変更は研究課題全体の目的達成のためには必要な変更であったと考えている。なお、次年度に行う観察調査の準備(ビデオカメラ等)に関しては、次年度の同時期に観察調査を実行できるよう、本年度内に終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、初年度に具体化した調査計画に基づき、観察調査を中心に計画の実施を進めていく。調査内容は、共同作業場面の行動と自己愛との関連の検討である。初年度に特定した時期における適応の低下が、どういった原因から引き起こされるのかを、行動やコミュニケーション(発話)の特徴から明らかにしたい。具体的には、観察の場面を2種類用意し、初年度に実施しなかった予備観察を行った上で調査を実施していくことを計画している。1つ目の観察場面は、実際の活動グループ(形成時期が同じの複数のグループ)を対象に、特定の課題を実施する状況である。この状況においては、自然場面に近い状態で自己愛者の対人的な行動が捉えられると考えている。2つ目の観察場面は、仮想的な共同作業場面で、アナグラム課題等を用いた実験実施を行う予定である。この状況は自然な事態からは少し距離があるが、より統制した状況において、行動の違いが明確にが捉えられるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費は、平成23年度分の次年度使用額もあわせて、主に観察調査の参加協力者への謝金と調査で得られた音声のテープ起こし、ビデオ映像による行動分析にかかる費用に充てる。また、次年度新たにとるデータとともに、平成23年度のデータの分析結果を学会等で発表したり、論文化するための費用としても充てたいと考えている。旅費に関しては、基本的には申請通り使用する計画であるが、昨年度参加予定であった国際学会への参加を1件追加し、繰り越し分を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)