2012 Fiscal Year Research-status Report
自己愛的青年の社会適応を促す要因の解明と心理教育プログラムの開発
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23730611
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
中山 留美子 三重大学, 高等教育創造開発センター, 講師 (60555506)
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Keywords | 自己愛 / 大学生 / 対人的適応 / 教育プログラム |
Research Abstract |
平成24年度には、初年度の研究成果をもとに時期・方法を決定して、研究計画を具体化し、実施した。すなわち、交付申請書記載の計画では、自己愛の高いメンバーを含む複数のグループを対象に、初年度の計画で明らかになった対人適応の差が明確になる時期における相互作用を検討するとの計画となっていたが、その計画に基づき、まず、平成23年度の成果により、対人適応の差が明確になるのは、関係性の中期段階以降であることが示されたため、グループ結成から2か月後以降のグループを対象として、相互作用の検討を行った。 また、研究方法に関しては、当初の計画では自然な相互作用場面を検討することとしていたが、より厳密な検討を行うため、実験状況を設定し、検討の観点を明確にした。具体的には、共同作業(アイデア創出)場面を設定し、その際のパフォーマンス量や感情状態、グループメンバーへの意識を尋ねることとした。なお、アイデア創出場面の性質による影響を受けると考えられたため、実験状況は3種類(成績公開、成績通知、成績非通知)設定した。 昨年度の研究成果と理論的な検討から、自己愛的な青年の対人的適応が低下し始める関係性の中期段階において、自らの成績にこだわりグループメンバーへの配慮が欠けることが、仲間の反感を買い、その結果居心地が悪くなっていくというプロセスを想定した。また、そのようなプロセスは、個人の成績が公的に評価されるほど、生起しやすいものと考えられた。この計画を進めることで、自己愛的な意識を高め、あるいは低下させる要因を発見することが期待でき、最終年度の「教育プログラムの開発」に近づけるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の計画通りの研究遂行ができているものと判断している。つまり、2年目の目的であった具体的な相互作用の検討に関して、2つの実験計画を進められた。1つ目の実験計画は、大学生約150名(約40グループ、個人参加約30名ほど)を対象に実験を行い、その結果について、日本心理学会のワークショップにて発表を行った。 また、2つ目の実験計画として、未知の他者とのペアワークにおける相互作用を検討するという計画を設定し、予備的なデータ収集を終えた。2つ目の計画については、本実験を平成25年度に行う予定であるが、すでに収集したデータを予備実験の成果としてまとめ、発表を行う予定である。 1つ目の実験計画については、成果を国際学会で発表する予定もしていたが、発表日が入試業務(センター試験)と重なり、参加できなかった。初年度も研究開始が遅れたことで、十分に成果の公表ができていないため、その点、最終年度において積極的に遂行していく必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度が本研究計画の最終年度となる。今のところ、本研究課題の目的である「教育プログラムの開発」につながる明確な要因が発見できていないため、平成24年度の成果をもとに、さらに実験・調査の計画を進めていく予定である。 現在得られている成果から、「教育プログラムの開発」に関して、当初予定していた具体的な成果が得られないことが予想されるが、そのことへの対応としては、実験計画と教育実践を兼ねた取り組みを行うことを計画している。すなわち、要因を探ることだけを目的とした実験を行うのではなく、また、成果を検討するための教育実践のみにとどめるのでもなく、実践的な要因の検討が可能な計画を立案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画の使用に関しては、以下の2点を重点的に行いたいと考えている。1点目は、これまでの研究成果の公開に向けた使用である。国内外の学会誌への投稿準備(翻訳等)を行い、刊行までのプロセスを進めたり、学会での発表を行えれば(旅費としての使用)と考えている。2点目は、実験計画の遂行のための費用である。具体的には、実践に必要な教材費(活動に用いる道具代)や成果検討のための記録用具(ボイスレコーダー、付箋紙等)、記録物の文字起こし費用等を想定している。
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Research Products
(3 results)