2011 Fiscal Year Research-status Report
幼児・児童の表現における記号的媒介過程に着目した自己の発達理論と教育実践との接続
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23730613
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
小松 孝至 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (60324886)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 教育系心理学 / 児童 / 幼児 / 自己 / 発達心理学 |
Research Abstract |
(1)理論的検討-presentational selfの概念に発達的な視点をより明確に導入するため,基礎となる諸理論に関して対象を広げて収集・検討するとともに,理論的精緻化をはかった。研究代表者が理論的に依拠する,Jaan Valsiner教授(米 Clark大学)による記号的媒介(Valsiner, 2001)の考え方をふまえつつ,本年度はVygotskyおよびBakhtinを中心とした,社会文化的な認識と発達に関する理論,BaldwinやMeadなど,いわゆるシンボリック相互作用論における自己論や発達論 などを中心に検討した。これらの考察をふまえ,学会発表を行うとともに,Valsiner教授のもとに滞在してClark大学のセミナーで発表の上助言をうけ,それをもとに論文(英文)を学術誌に投稿した。(2)既存データの分析-相互作用の中でみられるpresentational selfの発達の検討 (1)で行った理論的な精緻化と並行しつつ,これまで申請者が収集した会話データ・児童の日記のデータについての再分析,また,申請者が現職教員と共同で研究を行ってきた小学校でのスピーチ活動の分析を行った。その結果をもとに,これまでの子どもの過去経験の語りに関する研究が重視してきた「精緻化」とは異なる分析・考察の視点を学会にて発表するとともに,(1)で述べた論文にもその結果が反映された。(3)新規データの収集および次年度の調査にむけた準備 平成24年度以降,小学校の授業,スピーチ活動の記録,また,日記指導の結果の分析を進めるにあたり,小学校を継続的に訪問し,授業場面の参与観察(ビデオ等の記録はなし)から記録の方針を検討するとともに,日記指導が継続的に行われている小学校において4年生児童を対象とした質問紙調査を実施し,児童の日記指導に対する意識を明らかにすることを試みた。調査結果は現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の結果は,交付申請書に記載した研究目的である,presentational self 概念の精緻化を達成するための理論的な考察,既存データの再分析,新規データの収集とその分析の準備がほぼ予定通りに進行していることを示している。具体的には,理論的展開について基礎的な議論が論文としてまとめられ,また,それにかかわって既存資料も分析が進められ,学会等で発表されている。一方で,小学校で新たな資料を得る準備がなされている。24年度以降,さらに多くの文献や関連領域の研究を検討しつつ,データの分析と理論的考察の往還を進めることによって,発達的な観点と学校教育場面への展開を加味した理論的・実践的考察が進められるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度以降も,当初の計画に沿って,理論的考察と既存・新規資料の分析を進める。理論面では昨年度の考察およびValsiner教授からの助言をもとに,これまで相対的に手薄となっていた領域の文献を検討する。また,小学校の教室での新規の資料収集を行い,スピーチや授業での意見の発表の過程をpresentational selfの枠組みから分析するとともに,既存の資料である会話や日記,スピーチ活動の記録の分析を理論的考察と並行して進める。なお,結果の発表の場の1つとして,当初24年度開催の国際学会を想定していたが,助言を得ているValsiner教授からの情報等をもとに,より適切な学会への変更を視野に入れ検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
理論的考察のための文献の購入や,新規データを得たうえでそれを保存するための諸機器,また,画像や音声処理を行うためのソフトウェア等の購入を予定している。学会での資料収集および,Clark大学のセミナーで研究を報告しValsiner教授から助言を得るための国内・海外旅費を予定している(Clark大学訪問については内諾済み)。成果発表のための国内旅費を予定している。
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