2012 Fiscal Year Research-status Report
幼児・児童の表現における記号的媒介過程に着目した自己の発達理論と教育実践との接続
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23730613
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
小松 孝至 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (60324886)
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Keywords | 教育心理学 / 児童 / 幼児 / 自己 / 発達心理学 / 文化心理学 / 記号論的媒介 |
Research Abstract |
昨年度実施した子どもの自己のあらわれをめぐる記号論的媒介過程に関する文献研究および理論的な考察の成果を論文として発表するとともに,国内の学会で発表した。これらの研究では,当初幼児と母親の会話をもとに考えられたpresentatioal selfの概念が,他にも子どもの参加する様々な相互作用(例:授業場面での意見交流)に適用可能な一般性の高い考え方となりうることを確認した。 本年度は,これらの理論的考察をもとに,小学校での授業場面での子どもの相互作用に関する資料収集(観察記録)を行った。小学校6年生の1クラスについて,国語の4単元について,授業を継続的に観察(ビデオ・録音記録を実施)した。これらの結果について基礎的な整理を行うとともに分析の視点を定める作業を行った。 これとは別に,これまで担当者が共同研究者とともに分析してきた既存の資料(小学校3年生が担任の指導のもとで書いた日記,26人分 632篇)の分析を,上記の理論的立場から実施し,論文を執筆した(再投稿のため改稿中)。この結果についても,国内学会で発表するとともに,この結果と理論的考察を次年度に予定されている国際学会で発表するための準備を行った。さらに,昨年度実施した,日記指導を継続している小学校での4年生児童への調査についても共同研究者とともに分析をすすめ,まとめを行った(次年度国内学会で発表予定)。 以上の研究については,これまで継続的に研究助言を得ている,米国Clark大学のJaan Valsiner教授の助言を得た。3月にはValsiner教授を訪問し,本研究の基礎となっている記号論的アプローチに基づく自己理論について,教授のセミナーで研究発表を行うとともに,その内容を論文としてまとめた。この論文はValsiner教授がSeries Editorを務める研究書の1章となる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の結果は,交付申請書に記した研究目的である,presentational self 概念の精緻化を達成するための理論的考察,既存データの再分析,新規データの収集とその分析準備がほぼ予定通り進行していることを示している。 具体的には,理論的考察について,昨年度執筆した論文が公刊されるとともに,Valsiner教授の助言のもとにさらに考察がすすめられ,新たな論文がまとめられ,学会での発表もなされている。また,教育場面への適用については,既存のデータについて分析がなされ論文が執筆され学会で発表されるとともに,授業場面について,十分な量の記録が得られ,今後の分析への準備が整っている。 25年度以降,これらの分析と考察が進められ,また,教育現場で実践を進める研究協力者の助言をふまえて,研究目標に近づくことができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度には,当初の計画に沿って次のように研究を進める予定である。 ○理論的考察について,ひきつづきValsiner教授の助言を得て検討を進めるため,年度後半に教授を訪問し,セミナーで研究発表を行い,本年度の考察について論文をまとめることを目指す。また,教授の助言をもとに,国際学会で研究成果を発表し,多くの研究者からの意見を得ることとする。 ○昨年度記録した授業場面の分析を実施し,授業の中で子どもの自己とその発達をいかに見出すことができるかについて考察をまとめる。一部を学会発表の形でまとめるとともに,教育現場の研究協力者の意見をもとに,どのように現場での実践に結びつけうるかを検討する。 ○児童の日記の分析にもとづく論文の執筆を続けるとともに,児童の日記指導に関する意識について,研究協力者と共同で学会発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
○本年度まで実施した研究の成果の発表のため,国際学会および国内学会に参加する(旅費・参加費)。また,Valsiner教授のセミナーに参加し教授から助言を得るための旅費を使用する。 ○上記発表および執筆した論文の英文校正を実施する。 ○収集したデータの分析のためのソフトウェア・保管のための媒体等を購入する。 ○さらなる理論的考察のための文献・資料等を購入する。
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