2013 Fiscal Year Research-status Report
キャリア志向の女性における母親としての発達―「母性愛」信奉傾向との関連―
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23730616
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
江上 園子 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (10451452)
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Keywords | 「母性愛」信奉傾向 / キャリア志向 / 親としての発達 |
Research Abstract |
本年度の研究実績としては日本発達心理学会第25回大会での自主シンポジウム企画および話題提供の他、日本心理学会での公募シンポジウムの企画および司会、日本保育学会での口頭発表、日本教育心理学会および国際家族心理学会でのポスター発表が挙げられる。 日本発達心理学会での発表では、母親が「母性愛神話」・「三歳児神話」などの周囲からのジェンダーベクトルにさらされる中、どのように自分の生活や親としての意識を意味づけているのか、その揺らぎや葛藤も含めて個性記述的な分析を行った。中でももともとは「母性愛」信奉傾向が高い母親でも、出産後に自分のキャリア志向を自覚して脱・伝統的な性役割観を持つようになるなど、興味深い事例を取り上げた。これは、キャリア志向の母親が「母性愛」信奉傾向との狭間でどのように成長・発達していくのかという本研究の大きな命題と関連のある代表事例であり、今後、質問紙調査を行う上での多くの示唆も得られた。 またその他の学会では、「母性愛」信奉傾向は本人だけの問題ではなく、とくにパートナーである夫がどのように考えているかということが夫婦関係や母親の養育態度に影響しているという発表を行った。これも、面接調査において夫に関する項目を組み入れる重要性の確認、ならびに家族システム論の視点から母親をとらえる必要性の検証となりえた。 さらに質問紙調査へ向けて、先行研究の精読および尺度項目の選定も行った。海外のジャーナルの執筆者に問い合わせ、尺度を和訳する許可も得、日本語版を作成した。 以上のようなことを踏まえたうえで、今後は大規模な質問紙調査と面接調査による詳細な事例検討を並行して継続的に行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内・海外の研究論文を精読し、研究のアウトラインを明確にすることができた。大規模な質問紙調査で使用する項目の選定はおおむね終了し、継続的に行っている面接調査のケース数も集まってきた。さらに、日本発達心理学会第25回大会における自主シンポジウムでは企画者と話題提供者を担当し、本研究の構想の一端を発表できた。この他、前回の科学研究費・若手研究(B)からの継続で、日本心理学会、日本保育学会、日本教育心理学会、国際家族心理学会でもそれぞれ発表を行った。 以上より、現在までの達成度はおおむね順調であると評価した。 ただし、質問紙調査の実施までは行えなかった。次年度以降、調査を順次遂行していけるように努めなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は大規模な質問紙調査の遂行がもっとも大きな目標であるが、本年度は7月までしか研究に従事できない。そのため、復帰後に調査がスムーズに進められるよう、準備を完全に行っておくことが当面の推進方策である。具体的には質問紙の最終チェック、協力園の選定(地域や保育所幼稚園の情報収集)などである。 なお、面接調査のデータが集まってきたことから、その分析および結果をまとめる段階に入る。そのため、7月までにはインタビューのテープ起こし、結果の整理までを完遂させておくことも重要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大規模な質問紙調査の実施を予定していたが、準備段階は終えたがその実施までは行えなかったため。また当初は出張を1回多く想定していたが、協力者の体調が悪く、見送ることとなったため。 大規模な質問紙調査の実施後、大量のデータ分析を行う必要がある。そのため、高度なデータ分析に用いることができるパソコンと分析用のソフトの購入を予定している。
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Research Products
(6 results)