2014 Fiscal Year Research-status Report
教師の成長を促す教育研修教材「教育相談クロスロード」の開発とその有用性の検証
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23730618
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
網谷 綾香 佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (90404110)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 教育相談 / クロスロード / 教師の葛藤 / 研修 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,教育相談に関わる教師を積極的に支援する方法となりうる教材の開発である。 教育相談において,教師は児童生徒への指導・援助に困難を感じ葛藤状況に陥ることが多いが,本研究ではその葛藤状況を,教師の成長を促すポジティブな岐路として位置づけ,これを活用した教師対象の教育研修用教材,「クロスロード教育相談編」を開発する。「クロスロード」は矢守・吉川・網代(2005)が防災対応シミュレーションゲームとして開発した手法であるが,その後広がりを見せ様々な領域で幅広く活用されている。 H26年度は,まず,教師の葛藤に関するアンケート調査を実施し,教育相談上で教師が困難を感じる状況を洗い出した。本アンケートの結果や,スクールカウンセラーや現場の教師が体験した事例をもとに,「クロスロード教育相談編」のシナリオ36項目を作成し,試行版を作成した。 開発した試行版の一部を用いて,実際に小学校2校で研修を実施し,その効果を検討した。本教材で呈示される葛藤場面は,最小限の状況しか提示されておらず,参加者はその行間を読んで最終的な判断を下す。その際,「状況や立場,経験による判断の違い」を様々に考慮し判断することが迫られる。一方,本教材の大きな特徴は,「多数派の意見を予測」してカードを出すところにある。葛藤場面を提示された時,一度は自分自身におきかえて葛藤しながらも判断を下す。その上で,多数派を予測しなくてはならないため,「自他双方の意見を考える」ことになる。ディスカッションを通して,「他者の多様な意見を聞く」ことができ,「多様な考え方に触れることでの気づき」が得られる。自分の考え方の偏りへの気づきや価値観の広がりについての記述も見られたまた,多数派予測という手法は,直接自分の意見を出さずにすむことから,ゲーム性を高め,参加者に「楽しさ・安心感」を与えていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り,教材の試行版を作成し,教師や教員志望の学生を対象に研修を行い,効果の検証をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「クロスロード教育相談編」完成版の作成と研修効果の確認 これまでの成果をふまえ,より教師の成長を促しうる教材として「クロスロード」を洗練させる。必要に応じてシナリオや実施方法の改訂を行い,完成版を作成する。完成版は,印刷業者に委託し,使用者がカードゲームとして興味を持つようなデザインに仕上げる。完成版についても,数回の試行を実施し,研修効果を再確認する。 (2)ファシリテーター用実施マニュアルの作成と試行 ファシリテーターがどのように教材を用い,どのように研修を組み立てればよいかについて,その手順と留意事項を示したマニュアルを作成する。申請者以外のスクールカウンセラー,および,教育相談について熟知した教師に,その実施マニュアルを用いてファシリテーターとしてゲーム進行させ,運用上の問題がないかどうか確認を行う。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに進んでいるが,協力者への謝金や旅費が当初計画よりも少なく済んだため,若干の未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果発表のための旅費等に使用する予定である。
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