2011 Fiscal Year Research-status Report
仮想的有能感と社会観の循環影響モデルの検討-青年の政治的意識・態度に注目して
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23730634
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
小平 英志 日本福祉大学, 子ども発達学部, 准教授 (00442228)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 他者軽視 / 自尊感情 / 政治的態度 |
Research Abstract |
本研究では、仮想的有能感と社会観が相互に影響し合うという循環影響モデルの実証的検証を目的とした。特に青年の他者軽視傾向と政治に関する意識・態度、行動に注目して検討を進めた。 初年度は、第一に、他者軽視傾向と社会観と相互影響に関する追試的検討を実施した。大学生470名(男性218名、女性249名)を対象に、他者軽視尺度、自尊感情尺度、競争社会・序列化社会への意識尺度、主観的自己効力感尺度、信頼感尺度、10年後の日本の予測についての質問項目からなる質問紙に回答を求めた。解析の結果、他者軽視傾向は、序列化社会への意識と正の相関関係にあり、他者信頼感と負の相関関係にあることが示された。また、他者軽視傾向の強い青年ほど10年後の日本社会(文化、経済、政治、国民生活)をより否定的に予測している傾向も見られた。この研究成果は2012年度の日本心理学会第76回大会で発表する予定である。 第二に、政治に対する意識・態度と仮想的有能感との関連について検討を行った。政治に関する新聞記事(消費税増税に関する記事)を刺激材料として、大学生191名(男性73名、女性118名)に自由な反応を求めた。自由記述によって政治に対する意識・態度(批評を含む)を収集することで、特に政治に対する態度について他者軽視傾向との関連を検討した。こちらの検討は、予定通りに調査とデータのハンドリングが終わり、解析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた調査研究を実施できたこと、その解析や成果発表の準備も進んでいることから、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、政治に対する意識や態度を、政治信頼感や政治効力感の概念を用いて測定し、仮想的有能感と社会観の相互因果関係を検討する予定である。専門学校・短大・大学生500名程度を対象に、仮想的有能感尺度、自尊感情尺度、政治信頼感・政治効力感尺度、政治的疎外意識尺度等からなる質問紙を実施する。まず、5月にTime1調査として、仮想的有能感尺度、自尊感情尺度、政治への関心度を含む調査項目を実施し、6月にTime2調査として、政治信頼感・政治効力感尺度、政治的疎外意識尺度からなる質問紙調査を行う。7月から年度末にかけては、これらの調査の統計的解析を進める。特に仮想的有能感尺度と自尊感情尺度によって測定される個人的特性が、政治に対する関心、態度、効力感といったものにいかに影響するのかについて、焦点を絞った分析を行う。最終的に、青年期の社会参加にとって、仮想的有能感がどのような阻害要因であるのかを、社会観を仲介させたモデルの検証を通して明らかにしていく。年度の終わりには、本年度の研究成果公表の準備、次年度の調査実施に向けた準備を進める。 さらに、1年目の研究成果の報告を日本心理学会にて発表を行う。また、当初の予定通り、研究成果報告用のWebページの作成のために、準備を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度と同様に、質問紙の作成から実施、解析、成果公表のために必要となる物品(OA用紙、プリンタトナー等)の費用、データの入力補助の費用、学会発表(本年度は日本心理学会(専修大学、神奈川県)へ発表申し込み済み)の旅費・参加費を必要とする予定である。また成果報告用のホームページの開設に向けて、研究費を充てていく。 昨年度は、質問紙の作成を行った際、プリンタのトナーの消費が予定していたよりも少なく済んだため、新たなトナーカートリッジの購入を先送りにした。繰り越し分の研究費に関しては、本年度も多数の青年を対象とした調査を予定しているため、当初の予定通りトナーカートリッジの購入に使用していく予定である。
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