2011 Fiscal Year Research-status Report
言語活動促進プログラムが算数の複数解法協調的吟味を促す効果に関する研究
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23730636
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
河崎 美保 追手門学院大学, 心理学部, 講師 (70536127)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 学習過程 / 協調学習 / 言語活動 |
Research Abstract |
本研究は、協調的学習理論を深化させるとともに、協調学習を支える言語力の育成という重要課題に取り組むべく、以下の研究を遂行することを目的としている。 第1に、学習場面で「協調的」に言語を使用する効果的な方法を児童らが習得するためのプログラムを小学校の教員と連携して開発・実施する。第2に、算数授業に注目し、1つの問題に対して児童が考案する複数の解法を「協調的」に吟味した場合に期待される学習促進効果、および効果を生じさせる認知的メカニズムを実証的に明らかにする。第3に、以上の二点を進める中で教員に生じる協調的言語活動に対する認識の変容を明らかにする。 研究の初年度となる本年度は、アセスメント期として位置づけた。研究者と連携した教育実践研究の成果が実質的な所産をもたらすには、教員のイニシアティブを高めるために入念な問題意識の醸成と共有が重要であり、必須の研究期間といえる。上述の第1の目的である、研究のプログラム開発を進めるために、小学校高学年の授業を継続的に観察・分析するとともに、第2の目的に関して、協調的言語活動の促進プログラム実施前段階での、児童らの複数解法協調的吟味における説明活動の特徴を抽出した。また第3の目的に関して、現段階での教員の認識についてのデータを、授業観察後のインタビューを通じて収集した。 以上を通じて、児童の協調的言語活動の知識・技能の状況や、授業中の社会的相互作用を担当教員がどのように配分し運用しているかを明らかにした。これらにより、次年度において、協調的言語活動プログラムを実施し、児童、教師の変容を検討するための準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の初年度となる本年度は、アセスメント期として位置づけ、研究目的として、第1に協調的言語活動促進プログラムの開発に向けた小学校教員との課題の共有、第2に算数授業における複数解法の協調的吟味による学習促進効果とメカニズムに関する調査の開始、第3に、協調的言語活動に対する教員の認識に関する調査の開始を掲げた。 このうち第1の目的については、小学校6年生の1クラスを週に1回のペースで1年間継続的に観察し、授業について担当教員と協議することにより、当該クラスにおける協調的学びを阻害する課題についての共有が進み、当初の目的が達成されたといえる。 第2の目的については、当該クラスの実態を踏まえ共有した課題に基づき、調査の重点を修正して実施したため、当初の計画通りではなかったが、一定程度達成されたと考える。具体的には、学年末に実験授業を実施し、問題解決場面において、まずは一人ひとりが自分の思考内容を他者に伝えることを念頭に、十分に考え、精緻な表現を行うことを促すよう試みた。この結果、当該単元においてどのようなタイミングで協調活動を加えればより質の高い学びを促進できるかについて示唆を得た。 第3の目的については、授業観察後のインタビューを通じ、協調的言語活動を授業において促す上で、教師が感じている困難さ、信念、カリキュラム上の制約を中心に聞き取り、当初の目的が達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、今後2年間に次のように推進する計画である。 研究の2年目となる平成24年度は、プログラム実施期として位置づける。第1の目的である、協調的言語活動促進プログラムの開発に関して、1年目に得られた示唆に基づき作成した協調的言語活動プログラムを実施する。第2の目的である算数授業における複数解法の協調的吟味による学習促進効果とメカニズムの解明に関して、1年目に実施した調査を、同様に実施し、経年比較を行う。加えて、第3の目的である教員の認識の変容の検討に関して、協調的言語活動促進プログラムの開発に協力を得る教員への聞き取り調査を継続して行う。 研究の3年目となる平成25年度は、プログラム評価期として位置づける。第1の目的および第2の目的に関して2年目に実施したプログラムおよび調査を、対象学年を変えて実施し、経年比較を行う。加えて、第3の目的に関する教員への聞き取り調査を総括し、論文としてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主たる使用計画として、電子機器・図書といった設備備品費、データ記録用媒体、調査用紙、文具類といった消耗品費、成果発表・資料収集・研究打ち合わせのための国内旅費、成果発表のための外国旅費、研究補助のための謝金、その他、印刷費・英文校閲費・通信費・運搬費を予定している。 このうち、図書については算数学習・協調的言語活動関連図書を中心に購入する。前年度において、2011年度から実施の新学習指導要領に対応した算数教科書、指導書等の収集は進んだが、言語活動の支援プログラムに関する書籍や、新しく出版される関連図書を中心に新たに収集する必要がある。また、調査の実施段階においては、クラス内の各ペア、グループの話し合いの様子を記録するための機器や、調査用紙の作成に要する諸費用、データ保存用のメディア、調査に必要な材料・機器を調査先に運搬するための費用、調査実施における補助への謝金が必要である。さらに、研究成果の公表段階においては、国内外の旅費、学会参加費、英文校閲費、投稿のための郵送費、報告書の印刷費が必要である。
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