2012 Fiscal Year Research-status Report
中高年期における知能の経時変化とその維持・向上に有効な年代別ストラテジーの構築
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23730640
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
西田 裕紀子 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 予防開発部, 研究員 (60393170)
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Keywords | 中高年者 / 知能 / 縦断研究 |
Research Abstract |
本研究課題は,「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の縦断データを用いて,中高年期における知能の12年間の経年変化を明らかにするとともに,知能の経年変化に影響する心理社会的要因を実証的に検討し,中年期から高齢期にかけて知能を高く保持するための年代別のストラテジーを提言することを目的としている。 1.具体的内容:平成24年度には,以下の研究を進めた。 (1)データ収集:NILS-LSAの第7次調査として,半構造化面接及び自記式調査票により,知能及びその関連要因に関するデータ収集を行った(7月末に終了)。 (2)データ解析:第1次調査~第7次調査の縦断データを用いて,知能の12年間の経年変化を検討した。その結果,知能の側面や第1次調査時の年齢によって,知能の12年間の経年変化は異なることが示された。また,知能の経年変化に影響を及ぼす可能性のある要因(教育歴・抑うつ)の検討を行った。その結果,高い教育歴は,高齢期の知能の変化には影響しない(むしろ急激な低下を引き起こす)ことが明らかになった。さらに,知能と抑うつとの相互関係は,短期的に検討した場合,抑うつがその後の知能低下を招くというよりはむしろ,知能の低下が抑うつ状態の危険因子になる可能性が示された。 (3)研究発表:上記の解析結果について,学会発表及び論文執筆を行った。 2.意義・重要性:中高年者の知能は,日常的な問題を解決したり,生産的な活動を行ったり,他者に助言したりする能力と関連する重要な心理的側面である。しかしながら本邦において,その発達的変化やその要因に関する基礎データはほとんど蓄積されていない。今年度の解析では,知能の経年変化の様相や,関連する心理社会的要因が見出されたことから,社会的にも学術的にも,重要な知見が得られたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画として,縦断データの収集,第1次調査~第7次調査のデータを用いた知能の12年間の経年変化の検討,知能の経年変化に影響を及ぼす心理社会的要因の検討を予定し,申請していたが,おおむねそれらに合致した内容で研究を遂行し,論文執筆や学会発表などにおいて,成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,これまでに蓄積された12年間の縦断データを用いて,引き続き,知能の経年変化に影響を及ぼす心理社会的要因に関する解析を行う。まず,余暇活動等のライフスタイルが知能の経年変化に及ぼす影響について検討し,どのように日常生活を過ごすことが,知能を維持・向上させるのかについて明らかにする。また,それらの要因と,これまでに見出された知能の変化に影響する心的要因(抑うつ・開放性など)との因果関係を組み込んだ,多変量縦断解析を行う。さらに,それらの解析結果を学会や論文投稿により公表するとともに,中年期から高齢期にかけて知能を高く保持するために効果的なストラテジーとしてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた国際学会での発表を,日程の都合により,行うことができなかったこと等から,次年度への繰り越しが生じている。 平成25年度には,繰り越し分を含め,物品費(文具・書籍・解析用ソフトなど),旅費(研究成果を発信するための学会や資料収集のための講習会など),人件費・謝金(収集したデータの整理をするスタッフなどに対して),その他(研究成果を発信するための学科参加費・投稿料・別刷り印刷費・英文校閲費など)に使用する予定である。
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