2013 Fiscal Year Research-status Report
中高年期における知能の経時変化とその維持・向上に有効な年代別ストラテジーの構築
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23730640
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
西田 裕紀子 独立行政法人国立長寿医療研究センター, NILS-LSA活用研究室, 研究員 (60393170)
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Keywords | 中高年者 / 知能 / 縦断研究 |
Research Abstract |
本研究課題は「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の縦断データを用いて,中高年期における知能の加齢変化を明らかにするとともに,知能の加齢変化に影響する心理社会的要因を実証的に検討し,中年期から高齢期にかけて知能を高く保持するためのストラテジーを提言することを目的としている。 1.具体的内容:平成25年度には,以下の研究を進めた。 (1)データ収集:平成25年10月から,研究対象者をさらに長期的に追跡するフォローアップ調査を開始し,知能及びその関連要因に関するデータ収集を行った。本課題の当初の計画には含まれていなかったが,更なる長期的な追跡は,知能の加齢変化を解明する上で重要なものである。 (2)データ解析:知能と認知的余暇活動との経時的な相互関係について検討し,読書や芸術鑑賞などの文化教養活動に取り組むことは,その後の知能に積極的な影響を及ぼす一方で,知的水準の高さが,物書き,和裁や書道などの創作活動を促すことを示した。また,知能の一側面である短期記憶の12年間の加齢変化を検討し,短期記憶は54歳まで維持されるが,55歳以降で縦断的な低下を示す可能性を明らかにした。 (3)研究発表:上記の解析結果に関して,学会発表を行った。また,これまでの研究成果を整理し,今後の方向性を確認するために,中高年者の心理的発達や知能のエイジングに関する総説をまとめるとともに,当該研究課題に関する講演等を行った。 2.意義・重要性:中高年者の知能は,サクセスフルエイジングの重要な資源である。しかしながら日本国内では,知能の加齢変化やその要因に関する実証データは少ない。平成25年度には,新しい視点から解析を行うとともに,得られた研究結果をこれまでの心理学的知見に位置づける作業を進めることができ,本研究課題の遂行のために重要な成果を得ることができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度には,ライフスタイル要因と内的要因の因果関係を組み込んだ多変量縦断解析を行い,結果を総括する計画であった。この点に関しては,平成26年度に繰り越しとなったが,ライフスタイル要因に関する解析を行うとともに,これまでに得られた結果を整理し,先行の心理学的研究と合わせて考察することにより,本研究課題の意義や方向性をより明確にすることができた。従って,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,これまでに見出された知能の変化に影響する心理的要因(抑うつ・開放性など)と,認知的余暇活動などのライフスタイル要因,教育歴などの人口統計学的変数との因果関係を組み込んだ,多変量縦断解析を行う。それらの解析結果を学会や論文投稿により公表するとともに,中年期から高齢期にかけて知能を高く維持するために効果的なストラテジーとしてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,中高年期の知能を高く保持するための心理社会的要因の構造について総括し,国内外の学会等で発表する予定であったが,(1)これまでの解析結果や,先行研究のレビューに関しての論文執筆が主な活動となったこと,(2)育児休業のため,国外への出張や研究活動が制限されたこと,により未使用額が発生した。 資料収集のための書籍等の物品費,国内外における成果発表に伴う旅費,英文校正代,別刷り代,調査データの整理に関わる人件費等に使用する予定である。
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