2013 Fiscal Year Research-status Report
自己愛傾向と抑うつにおける自伝的記憶の機能不全の特徴
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23730642
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
田上 恭子 愛知県立大学, 看護学部, 准教授 (80361004)
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Keywords | 心理的障害 / 自己愛 / 自伝的記憶 / 抑うつ |
Research Abstract |
今年度の研究実績は以下の3点である。 1. 目的1)2)に関する,自伝的記憶の機能の測定尺度(TALE)の検討,及び自己愛傾向における自伝的記憶の歪みと自己機能の不全に関する研究(研究3)のデータ分析と成果発表: TALEは日本人を対象とした場合,4因子構造の適合が良いこと,自己機能に関わる自伝的記憶の想起の視点について,誇大型自己愛では三人称的視点をとりやすく過敏型自己愛では一人称的視点をとりやすいこと,過敏型自己愛では自己の連続性を確かめるために自伝的記憶を用いている可能性があることが示唆された(第13回ヨーロッパ心理学会発表)。 2. 目的2)を検討するために行った,自己愛傾向における自伝的記憶の歪みと自己機能の不全に関する研究(研究4・5)の研究計画の見直しと立案: 前年度から引き続き文献検討,心理臨床家からの情報収集を行い,研究計画の新たな立案を行った。自己機能の不全のひとつの指標として,先行研究でも検討されている主観的時間的距離感を用いることとし,次年度質問紙調査を行う。 3. 自伝的記憶の機能がどのように人生の再構成に関わるか(研究6): 目的3)に関する研究として当初計画では自伝的記憶の語りと自己愛傾向との関連に関する面接法による質的研究を実施する予定であったが,実施困難な研究環境となったため,研究計画を見直す必要が生じた。そのため,まず自伝的記憶の機能を質的に捉えることを目的とし,人生の再構成と自伝的記憶の機能との関連及び抑うつの影響について,人生を1本の曲線で表してもらった大学生123名のデータの分析を行った。人生曲線の類型化及び抑うつとの関連を検討し,大学生の一般的な傾向と高抑うつ状態の特徴を見出した(2013 Asian Society of Human Services Congress発表)。次年度自伝的記憶の機能との関連を継続的に検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度,データの追加収集の必要性によりやや遅れが生じていたことに加え,文献検討や情報収集の結果,想定していた実験的アプローチが適さないことが明らかになり新たな計画立案が必要になったこと,さらに,研究環境が大きく変わりデータ収集が以前より困難になったこと,研究方法を再検討する必要が生じたことなどによる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,データ分析とこれまでの成果を踏まえ質問紙調査を実施し,最終成果発表の準備を行う予定である。具体的には以下の通りである。 1. 自伝的記憶の機能と人生の再構成との関連に関する研究のデータ分析: 当初計画の研究6に位置づけ,よりダイナミックに機能が捉えられるよう分析を工夫する。さらに自己愛と自伝的記憶の機能との関係をダイナミックに捉えるために,心理臨床面接事例の分析や文学資料の分析なども検討していく予定である。 2. 自己愛における自伝的記憶の歪みと自己機能の不全に関する質問紙調査研究の実施: データ収集については,効率を上げるため,アンケート調査会社に委託して行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの研究においてデータ数の確保などにより研究に遅れが生じ,平成25年度にも質問紙調査を実施することとしたが,研究代表者の異動による研究環境が大きく変わったためデータ収集が以前より困難となったことに加え,より綿密な文献検討の結果,予定していた方法を見直す必要性が生じた。また最終年度実施予定であった面接調査に関しても,研究計画の見直しの必要性が生じた。 1.質問紙調査実施経費: 調査実施に際して,アンケート会社に委託することとし,その経費に充てる。 2.研究成果発表の準備: 最終的な研究成果の発表に係る経費に充てる。 3.消耗品費: 研究実施に係る消耗品購入経費に充てる。
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