2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730644
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荒木 剛 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (20510556)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 侵入思考 / 自我異和感 |
Research Abstract |
様々な精神障害における中核となる症状に、侵入思考(intrusive thoughts)がある(Clark, 2005)。妄想、自動思考、強迫観念、心配など、これらは本人の意志とは無関係に意識の中に繰り返し侵入して通常の認知的活動を著しく妨害し、不安や恐怖などの否定的感情を強く喚起する。侵入思考は健常者群にも発生するが、臨床レベルにまで悪化していく原因として、思考抑制の関与が強く疑われている(Clark, 2005)。思考抑制につながりやすい認知評価次元としては「自我異和性」がある(荒木ら, 2010)が、他の評価次元との関連性を含め、生起しやすい条件についてはほとんど明らかとなっていない。本研究の目的は、(1)自我異和的評価と他の認知評価の関係を整理する、(2)TAFと自我異和的評価の関係を明らかにする、(3)思考の制御困難性が自我異和的評価に及ぼす影響について検討する、(4)思考の新奇性/既知性が自我異和的評価に影響していく過程を調べる、の4点に集約される。平成23年度はこのうち(1)について検討するための質問紙調査を実施する予定であったが、平成23年3月11日に発生した東日本大震災の影響により、本研究が直接の研究対象とする日常的な侵入思考の中に震災関連またはPTSD由来のものが多く混入してしまう可能性が懸念された。PTSDの予後に関しては、症状が軽快するまでに6ヶ月~12ヶ月ほどの期間が必要なことが知られている(Stein et al., 2011)。そのため今年度は最新のデータ収集技法および解析手法を実行するための環境整備に注力し、平成24年度に(1)と(2)の検討を目的とした質問紙調査を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災の発生によりデータ収集の延期を余儀なくされた一方で、データ収集と解析のための環境整備および技法の習得に専念できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)自我異和的評価と他の認知評価の関係を整理する、(2)TAFと自我異和的評価の関係を明らかにする、の2点が当面の研究の目的となる。 (1)については、OBQで測定される"責任と脅威の過大評価"・"完全主義とあいまいさ不耐性"・"思考の重要性とコントロール"の認知評価次元と、EDQで測定される自我異和性の次元の相互の関係性について、相関分析および2次因子分析などの手法を用いて解析する。なお、分析の過程で各認知評価次元の間に階層性や重複が発見された場合は、EDQの項目内容や翻訳を修正・整理したうえで、24年度中に階層性を仮定した質問紙調査を再度実施し、改訂版EDQの信頼性・妥当性の検討を行なう。 また、(2)の調査も引き続いて実施する。仮説としてTAFが自我異和的評価を通じて対処方略(TCQにより測定)に影響するというモデルを構築し、その妥当性を共分散構造分析により検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度前期中に(1)の質問紙調査を完了させ、続いて後期に(2)の質問紙調査を実施する予定である。研究費の主な用途としては、調査協力者への謝礼、心理尺度の購入費、研究補助者(データ入力等の作業の補助)への賃金、英文校正代金、学会発表時の旅費などである。 なお、これらの次年度使用額は、当初計画していた(1)の調査を次年度に延期することによって生じたものであり、延期した(1)の調査に必要な経費として平成24年度請求額 とあわせて使用する予定である。
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