2013 Fiscal Year Annual Research Report
転換的語り直しによる侵入思考および記憶の過度な一般化への介入効果の検証
Project/Area Number |
23730645
|
Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
池田 和浩 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 講師 (40560587)
|
Keywords | 転換的語り直し / 自伝的記憶 / しあわせ感 / 信念 / 自己欺瞞 |
Research Abstract |
過去の体験の記憶のかたちを意図的に変えて語り直すことは、転換的語り直し(biased retelling)と呼ばれる。この種の語り直しは、語りの出力に沿う形で記憶を変容させる効果を持つという特性を活かしつつ、従来の臨床的な介入法としてよく利用されてきた。24年度は、思考統制能力の高さと語り直し効果の関連性および、出来事を肯定的に解釈し記憶を変容させる能力である“肯定的解釈能力”の高さが自己欺瞞の高さを予測しうるかを検証した。 これを受けて、最終年度は、転換的語り直しを含む、語り直しを行おうとする信念の強さが、語り手の精神的健康を予測するかを質問紙調査により検証した。大学生278名の参加者は、語り直しに関するポジティブな信念尺度(20項目)、しあわせ感測定尺度に回答した。分析の結果、語り直しの信念の1要因である語り直しへの効用感は、物事への好奇心や、些細なしあわせの知覚に対し正の相関を示した。一方、語り直しに対する道義的信念の高さは、人生への全体的な満足度に負の影響を及ぼすことが示された。 これらの結果は、(1) 語り直しの効用に信頼を置くことと、語り直しの道義的信念の高さは、相反的に全体的なしあわせ感に影響を与えること、(2) 道義的信念の高さに縛られた“語り直さねば”という責任が全体的しあわせ感を減少させた可能性があること、(3) 語り直しの効果を高めるには、ある程度の楽観性も必要となることを推察する。つまり、前年度に明らかとなった、物事への肯定的な解釈能力の高さや、思考統制能力の高さが、語り直しの信念を調節し、個々人の心理的な健康を導くものと考えられる。
|