2011 Fiscal Year Research-status Report
小学生から高校生までの学校における怒りの多次元的特徴の検証とその予防的介入
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23730650
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
下田 芳幸 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (30510367)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 怒り / 攻撃性 / 学校 / 青年期 |
Research Abstract |
1)学校での怒りの多次元尺度日本語版の作成 学校での怒りの多次元尺度(MSAI)について、日本語版を作成し(J-MSAI)、小学5年生から高校2年生までを対象に調査を行い、回答に不備のない3443名のデータを分析した。 まず、因子の再現性を検討したところ、原尺度と同じ4因子構造(怒り体験・皮肉的態度・破壊的表出・積極的対処)の採用は妥当であると判断された。また、収束的妥当性、弁別的妥当性、基準関連妥当性と、内的一貫性、再検査信頼性をそれぞれ検証した結果、いずれも概ね良好な値が得られ、J-MSAIは十分な妥当性・信頼性を有していると判断された。 さらに、男女差や小学生から高校生までの学校段階の差異を検討したところ、皮肉的態度(学校への敵意的認知の側面)は中学生で高まること、破壊的表出(学校での怒りの直接的表出)は中学生がやや高いものの、その差はさほど大きくないこと、積極的対処(学校での怒りの適応的に表出)については、女子が男子より高い傾向にあることなどが明らかとなった。2)J-MSAIの短縮版の作成 より簡便な尺度構成とするため、J-MSAI36項目の短縮版(20項目)を作成し、その妥当性・信頼性を検証した。その結果、妥当性および信頼性に関して、J-MSAIと同程度の値が得られた。 さらに、男女差や学校段階の差異の知見もほぼ一致していたことから、研究での使用に足る短縮版が作成されたと考えられる。また、パーセンタイル得点を反映した、領域ごとに、男女別・学校段階別に、4段階からなる換算表を付録として追加した。これにより、尺度得点から当該児童生徒の学校での怒りの相対的な程度が把握でき、介入に際して有用な情報として活用されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の基礎となる尺度開発として、J-MSAIの標準版、および20項目短縮版が作成された。標準版の検討については心理学研究への掲載が決定しており、短縮版についても富山大学人間発達科学部紀要への投稿を準備中である。 これらは計画当初の予定と一致しているため、達成は順調であると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は、J-MSAI(標準版もしくは短縮版)を用い、学校での怒りに影響を及ぼす要因に関する調査研究が中心である。 調査協力が得られている学校を対象に、怒りとの関連が示唆される、学校ストレッサー、自動思考、社会的スキル、感情への評価に関する調査研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)研究に関する論文・著作等の収集、2)研究に関する研究発表のための学会出張(年2回予定)、3)研究データ入力のための人件費、を中心に使用予定である。
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