2012 Fiscal Year Research-status Report
「非病理的解離」のメカニズムの解明―いじめ悪質化との関連から―
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23730651
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
廣澤 愛子 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (10345936)
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Keywords | 非病理的解離 / 病的解離 / いじめ悪質化 |
Research Abstract |
本研究の主眼の一つである、「非病理的解離」の尺度をひとまず作成することができた。非病理的解離を、「さまざまな出来事を個別的にとらえ、それらのつながりを断つ(分断する)」という心的状態を意味すると定義し、「無感動・無関心」「葛藤・内省のなさ」「共感のなさ」という3つの下位尺度が生成された。 非病理的解離については、病的な解離とどのように違うのか、病的解離と非病理的解離が同じスペクトラム上に位置するのかそれとも異なる性質を持つものであるのか、などが注目されており、まだ結論は出ていない。 本研究の結果からは、病的解離の防衛機能のうちの「水密区画化(Putnum,1997/2001)との関連性が示唆され、心的状態としては、非病理的解離と病的解離は部分的には類似性を持つことが推測された。ただし、病的解離の特性の一つである「同一性の疎外」については当てはまらず、非病理的解離と病的解離が同一のスペクトラム上に位置するわけではないことも示唆された。 このような非病理的解離と病的解離との関係性は、①臨床場面でみられる解離性障害のクライエントへの支援、②臨床場面でみられる、解離性障害の診断はつかないが他の精神疾患の中に解離症状が紛れ込んでいるクライエントへの支援、③臨床場面ではなく日常場面において、近年その増加が指摘される、青年期の男女にみられる解離症状、にどのように対応するのかについて多くの示唆をもたらすものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非病理的解離の尺度を作成することができた。また非病理的解離の尺度を構成する際に、専門家の意見を多く取り入れ、さらに質問紙調査からその妥当性と信頼性を検討することができた。これにより、今後は、①この尺度の精緻化を図るためにさらに調査対象者を増やし、より安定度の高い尺度を構成する、②いじめ悪質化との関連性を調べる、③本研究成果を国内外の学会で公表するという次の段階に入ることが可能となった。 また、非病理的解離と病的解離の関係について、その類似性と差異の両方を明らかにすることができた。これにより、今日の解離に関する様々な知見に新たな考えを投入し、解離に関する研究の発展に寄与することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、非病理的解離尺度の精緻化、具体的には、①非病理的解離と病的な解離との類似性と差異をより明確化すること、②非病理的解離尺度の妥当性・信頼性のさらなる検証、をまず第一に考えている。第二に、非病理的な解離がいじめ悪質化と関連があるのか、関連があるのならば、どのような関連がみられるのかを明らかにすることを考えている。①については、対象者を増やして調査を実施し、非病理的解離と病的解離の下位尺度間の相関を調べ、非病理的解離と病的解離の特性の中で、類似性の高いものと差異性の高いものとを明らかにする。②についても、①と同様に対象者を増やして調査を実施し、妥当性と信頼性を検証する。③については、質問紙調査から得られたいじめに関する質的データの分析を通して、非病理的解離の程度といじめ悪質化の程度に相関がみられるのかどうかを検討する。 また、一方で、これらの調査分析作業を継続しながら、本研究の成果を国内外の学会にて発表する予定である。次年度は最後の年となるので、本成果を積極的に公表していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては、本研究結果を国際学会にて発表する予定である。ほぼ調査は終了しているため、データの分析を続けながら、その成果を報告するための旅費に研究費を使用することをまずは第一に考えている。 次に、本研究の成果をまとめる作業において必要となる論文や著書などの文献費に充てることも考えている。
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