2013 Fiscal Year Annual Research Report
がん患者家族が体験する急性ストレス反応に関する臨床心理学的研究
Project/Area Number |
23730655
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
三谷 聖也 愛知教育大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (00565898)
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Keywords | がん / ストレス / 臨床心理学 / 家族支援 / 支援者支援 / ブリーフ緩和ケア / こころの治癒力 |
Research Abstract |
本研究はがん患者家族の急性ストレス反応とその予後についての研究である。近年がん患者へのストレス研究や心理的サポートは充実してきたが,がん患者家族に焦点を当てた研究は、小児がんの親のストレス研究などいまだ限られている。本研究ではがん患者家族のストレス体験の度合いやその意味,またその予後についての実態を把握し,彼らへの支援法を模索すべく、1)がん患者家族へのインタビュー、2)がん家族を支援する医療ソーシャルワーカーへの聞き取り調査、3)緩和医療に携わる医療者へのアンケート、4)緩和ケアカンファレンスに関するフィールドワーク、5)緩和医療に携わる医療者との共同研究会などを実施した。これらの結果から、患者同様に家族全体が日常から非日常モードに移行することに伴う特有のストレスがあること,死のイメージがつきまとう疾患の特殊性ゆえに家族がオープンに話すことが出来にくくなるという特有のストレスがあること,たとえ終末期であったとしても最後まで諦めたくない患者や家族の思いが存在することなどが判明した。またがん患者家族や担当看護師などのキーパーソンをさらに支える支援者の存在の重要性も明らかになった。さらに緩和医療の支援プロセスに沿わない患者や家族を,医療者の価値観に当てはめようとするのではなく,日本の家族や死生観に適合するように緩和医療の枠組みのほうを見直すことにより、患者や家族のストレス軽減やこころの健康の維持増進がはかれる可能性も示唆された。本研究ではこれらの知見を総合しブリーフ緩和ケアという支援モデルを提案した。ブリーフ緩和ケアとは、ブリーフセラピーの思想や哲学をベースに据えた支援モデルである。本モデルでは、患者や家族のこころの治癒力を最大化するための一群の支援法であると位置づけられるため、来るべき超高齢社会に生じるさまざまな医療問題や家族問題への解決の一助となることが期待される。
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