働く人による心の健康増進活動へのリフレクティング・プロセスの応用に関する基礎研究

2011 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 23730664
• Research Institution: Ibaraki Christian University
• Principal Investigator: 三澤 文紀 茨城キリスト教大学, 文学部, 准教授 (00438607)
• Project Period (FY): 2011-04-28 – 2015-03-31
• Keywords: リフレクティング・プロセス / メンタルヘルス / 家族療法 / ナラティヴ・セラピー / 臨床心理学

Research Abstract

本研究は、家族療法の「リフレクティング・プロセス（RP）」の概念や方法を基に、一般社会人が問題を話し合って解決する際に有効な方法の開発、並びに、各個人が問題の内省・熟考を進める際に有効な方法を開発のための基礎となる知見の検討を目的としている。平成23年度の研究では、特に一般社会人向けの方法の研究を中心に進めた。　具体的方法としては、小学校に勤務し、学級担任をしている若手教員・講師（経験年数5年以内）の計7名を参加者とする事例検討会を3回行った（各回の参加人数は、予定が合った4～5名）。検討内容は、参加者1名の抱える学級の問題についてであった。事例検討会は必ずRPの一技法である「リフレクティング・チーム・アプローチ（RTA）」の形式で行われた。検討会とその直後のシェアリングの録画記録を元に、実施方法の検討・改良が行われ、次回の検討会に反映された。この結果、第1に、一般社会人向けのRTAでは、専門家によるRTAに比べて手順や時間を大幅に定式化する必要性が明らかになった。RTAを開発したAndersenは細かな定式化をしなかったが、相談場面に不慣れな一般社会人では細かな定式化によって実施が容易となる。これを踏まえ、実施ガイドラインが作成された。ただし、本年度作成されたガイドライン最終版は文章量が多く、参加者からは理解するには時間がかかる事が指摘されており、今後の課題と考えられる。第2に、参加者の選定の重要性も明らかとなった。今回は若手教員のみを参加者としたことから、比較的話しやすかったとの感想が多かった反面、ベテランからのアドバイスを得ることできないとの声も聞かれた。どのような人を参加者とすべきか、具体的には参加者に上司がいるか、同じ職場かどうか、事例について知っているかどうか、等々については、参加者によって意見が分かれた。これについては、今後の重要な検討課題と考えられる。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

平成23年度は、震災により勤務大学の学事歴が大幅に変更となり、また参加者の予定も大幅に変更となった。この影響で、研究開始が大幅に遅くなった。また、当初はRTA研究と内的会話研究の2つの研究を行う予定であったが、先行研究があるために実施が容易なRTA研究を優先して行うことになった。さらに、いくつもの視察・調査や学会参加を断念せざるを得なかった。以上により、全体的な達成度は遅れていると判断される。

Strategy for Future Research Activity

RTA研究は、平成23年度の知見を基に進めていく予定である。ただし、当初の予測と事なり、RTAの実施はマニュアルの充実だけでは不充分と判明したため、それを補う工夫を検討する必要がある。その際、国内外を問わず、RTA（RP）を実践している様々な実践家や研究者と意見交換をできるだけ行い、検討材料としたい。また、震災により遅れた内的会話研究については、平成24年度より本格的に進めていく予定である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

震災により、実験、視察・調査、学会参加の一部を断念せざるを得ず、研究費の一部に未使用が生じた。同時に、実施できたRTA研究では、一般社会人向けの方法の開発に予想以上の難点が見つかったため、RTAの方法について多種多様なRTAの実践家・研究者との意見交換を行い、そこから一般社会人向けの方法のためのヒントを模索する必要が生じた。そこで、次年度以降には、当初の予定どおりの研究に加え、国内の様々な実践家や研究者、さらにはRTA発祥のノルウェーや比較的広く普及しているアメリカ等の海外の研究者をも含めて、情報交換することを計画している。