2011 Fiscal Year Research-status Report
ポジティブ心理学モデルによる筆記を用いた抑うつの予防的心理教育プログラムの開発
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23730668
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Research Institution | Tokyo Seitoku University |
Principal Investigator |
羽鳥 健司 東京成徳大学, その他部局等, 助教 (10458698)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ポジティブ心理学 / 強み / 筆記 / 予防的介入 / ポジティブ心理療法 / 国際情報交流(米国) |
Research Abstract |
本研究の目的は、個人が有する肯定的心理資源を増強するプログラムを開発し、大学生を対象とした抑うつの予防効果および予防の持続効果を検証することであった。目的達成のために、2011年度は、以下の3点を達成目標として設定した。第一に、既存のポジティブ心理学の諸理論を包括的に検討することである。第二に、ポジティブな心理的資源を網羅的に捉える評価尺度を作成し、その妥当性・信頼性の検討することである。第三に、短期的介入によって変化を起しうるかどうか、および変化を促進する上で重要な要因が何であるかを検討することである。 現段階での研究実施状況は、第一の目標に関しては、概ね達成された。最新の実証研究を中心に、ポジティブ心理学の諸理論を包括的に把握し、筆記を用いた大学生の抑うつ予防に関して中核的な役割を果たすと想定される概念の一つについて展望論文を作成し、現在査読雑誌に投稿中である。第二の目標に関しては、やや遅れているものの許容できる範囲の達成度である。第一の目標で特定された中核的な役割を果たす概念を測定するための尺度を作成するために必要なデータの取得を終了し、現在分析している最中である。米国の研究者と共同で研究を進めている。第三の目標に関しては、やや遅れているものの許容できる範囲の達成度であるといえる。大学生を対象として、介入群と統制群を設定し、3ヵ月間にわたって、抑うつを始めとする精神的健康度の介入前、介入後、フォローアップ期の変化量の差を検定するために必要なすべてのデータを収集し、現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の体調不良による入院加療等により、研究の進行が一時滞った。また、所属研究機関変更に伴い、通常の学務以上の事務的な手続きを行う必要があったことも計画の進行に多少の影響があった。したがって「当初の計画以上に進展している」および「おおむね順調に進展している」と評価することはできないと考えられる。 しかし、既存のポジティブ心理学の諸理論の包括的な把握についてはおおむね完了している。実際、ポジティブ心理学の諸理論の中から、特に強みに関連が強いと考えられる概念をまとめた展望論文を作成し、査読雑誌に投稿中である。また、ポジティブな心理的資源を捉える評価尺度の作成についても、やや遅れはあるものの、着実に進展している。具体的には、必要なデータはすでに取得して入力も終え、現在分析を行っている最中である。さらにポジティブな心理資源に働きかける短期的な介入が個人に及ぼす変化に関する検討についても、やや遅れはみられるものの、着実に進展しているといえる。具体的には、事業の短期的な介入実験の前段階に位置づけられる筆記を用いた介入実験について、原著論文を作成し、査読雑誌に投稿中である。また、短期的介入実験についても、すでに必要なデータは取得済みであり、分析を行っている。これらを総合的に判断すると、「遅れている」ではないと考えられる。 以上から、「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はない。当初の計画に基づいて研究を進めていく予定である。ただ、2011年度に実施する予定であった研究の遂行が予定よりも遅れているため、その後に予定されている研究に取り掛かる時期を前倒しする必要があると考えられる。予定されている研究計画を確実に遂行するために以下のような推進方策をとる。 2011度の到達目標のうち、まだ完全に達成できてない評価尺度の作成および短期的介入の分析を早期に行い、成果物を学術雑誌または学会発表にて公表する。2012年度の実施計画である大学生の抑うつ予防に対する試験的介入プログラムの開発とその有効性の評価、および試験的介入プログラム修正後のプログラムのテキスト化を達成するために、2012年5月中に2011年度の未達成課題の終了を目指す。6月には、試験的運用プログラムを実施するための具体的な方策を策定し、7月以降からは試験的運用プログラムを実施する。プログラム実施のためのフィールドはすでに獲得済みである。 実際の試験的運用プログラムについては、個人の強みのうち、特に抑うつを始めとする精神的健康に大きな影響力を及ぼすと考えられる概念と、その概念を応用した介入方法を抽出し、概念間の関係を考慮して、各概念に基づく介入方法をプログラムで実施する順番やそれぞれの介入方法で費やす時間、およびセッションの数等を決定する。そのために、各概念に基づく介入方法や介入に必要な時間およびそれぞれの介入のセッション数等を組み合わせたプログラムを数通り考案し、その中から理論的に最も効果が高いと考えられる組み合わせを選択して、プログラムを実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度に使用する予定の研究費は、大きく分けて、消耗品の購入、成果物の発表に必要な経費、事業の遂行に必要な謝金、の3つに分類することができる。 消耗品の購入については、本事業に関連する資料や論文等の収集、およびポジティブ心理学の動向を探るための実証研究を中心とした最新の先行研究を収集するために、10万円を計上する。次に、介入の効果を測定するために必要な評価尺度等の作成に必要な質問紙の作成に必要な費用、および質問紙やその他の事務的な手続きに使用する文具類の購入に5万円使用する。次に、成果物の作成および成果物の完成に至るまでの予備的な資料の作成、他の研究者との協議、その他の事務的な手続きに使用するために、プリンターに関連する備品(用紙、トナー、インク等)の購入に6万円を使用する。最後に、パソコン内に保存している個人情報等を保護するためのセキュリティソフトや、WEBを使用した国内外の研究者との意見や情報の交換に必要な機材の購入費として5万円を計上する。 成果物の発表に必要な経費として、国内旅費に15万円を使用する。この費用には、国内の数か所での学会発表に必要な移動および滞在等にかかる経費、および他の研究者と協議する際に協議先での滞在費等が含まれる。 事業の遂行に必要な謝金については、研究資料の整理、データ入力の補助等(5名×40時間)に、17万5千円を計上する。 以上の経費は、2013年度も引き続き計上する予定である。2013年度は、この他に、報告書を作成するために必要なソフト、および国外で研究成果を発表するために必要な旅費と英語論文を作成するために必要な校閲サービスを受けるための経費を計上する予定である。
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