2012 Fiscal Year Research-status Report
ポジティブ心理学モデルによる筆記を用いた抑うつの予防的心理教育プログラムの開発
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23730668
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Research Institution | Saitama Gakuen University |
Principal Investigator |
羽鳥 健司 埼玉学園大学, 人間学部, 講師 (10458698)
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Keywords | ポジティブ心理学 / 肯定的心理資源 / 予防的介入 / ポジティブ心理療法 / 筆記 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究の目的は、個人の肯定的心理資源を増強するプログラムを開発し、大学生を対象とした抑うつの予防効果およびその持続効果を検証することである。平成23年度の目的は、ポジティブ心理学の諸理論を網羅的に検討すること、および個人の肯定的心理資源の評価尺度を作成することであった。平成24年度は、前年度到達できなかった研究目的を完遂することの他に、以下の3点の研究目的を達成することを目指した。第一に、筆記を中心として個人の肯定的資源を増強する短期間の介入を実施し、その効果を検証することである。第二に、個人の肯定的資源を増強できる介入の持続的な効果を検証することである。第三に、第一および第二の目的で実施したプログラムを使用できるテキストを作成することである。 現段階の研究実施状況は、前年度の研究未到達であった部分をほぼ実施できた。具体的には、評価尺度については、信頼性と妥当性を検証し、査読雑誌に掲載された。現在、個人の強みを測定できる別の評価尺度を作成するためのデータを分析し、一部は国内学会で発表した。また、肯定的資源の一つについて展望論文を作成し、現在、査読雑誌に投稿している。 平成24年度に実施する予定であった研究のうち、第一の目的については、予定通りに実施することができた。具体的には、大学生を対象に困難な出来事を乗り越えたからこそ成長したと個人が知覚する外傷後成長を筆記に応用した介入を行った結果、精神的健康が改善されたという成果を得、査読雑誌に掲載された。補助的に、小学生を対象として肯定的感情の一つである感謝を増大させる短期的介入を実施し、現在分析している。第二の目的については、大学生を対象として感謝の介入を行い、介入前後とフォローアップ期の3時点における精神的健康の指標の変化を分析するためのデータを分析している最中である。第三の目的については、ほとんど実施できてない状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の体調不良により、約4か月間の入院加療を余儀なくされた。これにより、研究の進行が年度当初の予定よりも遅れてしまった。しかしながら、共同で研究を進めている補助者の助力等により、大幅な遅れは回避できているものと考えられる。 年度の当初に予定していた計画は、前年度の未達成分を含めて、合計5つの研究を実施することであった。各研究の進捗状況を「フィールドの確保とデータ収集」、「分析と論文作成」、「成果物の発表」3段階に分けて、それぞれ1~3の得点を割り振って合計15段階で評価すると11と評価され、達成度は約73%である。したがって、非常に遅れているとまでは言えないと考えられ、「やや遅れている」と自己評価した。 評価の内訳は、平成23年度の未達成分のうち、評価尺度の作成については3である。ポジティブ心理学の諸概念の網羅的な検討については2である。平成24年度では、短期的介入の実施については3、介入効果の持続力の検証については2、プログラムのテキスト化については1であり、合計11である。なお、事業の方向性の妥当性を高めるために実施した補助的な2研究については、別の評価尺度の作成は3、別の短期的介入は2である。これらの補助的な2研究の実施状況も含めて全体の遂行状況を勘案すると、「おおむね順調に進展している」と評価されても良いかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の方向性に関しては、大きな変更はない。ただし、当初の計画よりも遂行が遅れている。これは、病気加療の他におよび介入プログラムの妥当性を高めるための微調整を行ったことが主な原因として考えられる。 平成25年度は、平成24年度に実施する予定であった研究のうち、まだ完全に遂行できてない研究を早期に実施する。具体的には、短期的介入の持続効果を測定した試験的運用プログラムの効果の分析を終え、成果を発表する。また、短期的介入の持続効果および介入効果を吟味して、プログラムの実施方法を早期にテキスト化する。 平成25年度に新たに実施する研究は、個人が有する強みの長短に合わせた、長所活用型の抑うつ予防介入プログラムを実施し、その臨床的効果を検証することを目的とする。そのために、①開発されたプログラムを平成25年年6月~10月にかけて大学生を対象に実施し、介入群と統制群を比較する。②次に、プログラムの持続効果を検討するためにフォローアップ(平成25年10月、11月、12月)を行う。③最後に、得られたデータの解析と論文執筆(平成26年1月~3月)を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に使用する予定の研究費は、大きく分けて、消耗品の購入、成果物の発表に必要な経費、事業の遂行に必要な謝金、国外での成果物の公表、報告書の作成の5つに分類することができる。 平成24年度に引き続いて計上される経費は、以下の通りである。消耗品の購入については、本事業に関連する資料や論文等を収集するために、1万円を計上する。次に、介入の効果を測定するために必要な評価尺度等の作成やその他の事務的な手続きに使用する文具類の購入に1万円使用する。次に、成果物の作成および成果物の完成に至るまでの予備的な資料の作成、その他の事務的な手続きに使用するために、プリンターに関連する備品(用紙、トナー、インク等)の購入に1万円を使用する。最後に、パソコン内に保存している個人情報等を保護するためのセキュリティソフトや、WEBを使用した国内外の研究者との意見や情報の交換に必要な機材の購入費として2万円を計上する。 成果物の発表に必要な経費として、国内旅費に5万円を使用する。この費用には、国内での学会発表に必要な移動および滞在等にかかる経費、および他の研究者と協議する際に協議先での滞在費等が含まれる。 事業の遂行に必要な謝金については、研究資料の整理、データ入力の補助等(1名×40時間)に、4万円を計上する。 平成25年度に新たに計上する経費として、国外での研究成果の公表に必要な経費として、54万円を計上する。この費用には、公表に必要な移動および滞在等にかかる経費、および他の研究者と協議する際に協議先での滞在費等が含まれる。さらに、作成した英語論文の校閲サービスを受けるための経費として10万円、報告書作成ソフトの購入費として12万円の合計72万円を計上する。平成24年度から引き続き計上される13万円と合わせて、合計85万円の費用を計上する。
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