2013 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の認知症予防に対するグループ回想法の有効性の実証的検討
Project/Area Number |
23730671
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
野村 信威 明治学院大学, 心理学部, 准教授 (90411719)
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Keywords | 認知症予防 / 高齢者 / 回想法 |
Research Abstract |
回想法 (Reminiscence Therapy) とは,高齢者に過去を想起し語るように促すことにより様々な心理的効果を導く対人援助手段である (Butler,1963) 。日本でも医療・福祉・介護場面など高齢者に関する様々な場面で広く実践されており,その有効性が検討されている。また近年では,認知症の予防効果をもつ可能性が指摘されているものの,その実証的検討はほとんど行われていない。 本研究の目的は,ひとつは高齢者の認知症予防に対するグループ回想法の有効性を実証的に検討することである。もうひとつは回想法による効果例と非効果例の比較および海外の回想法の実践との比較から,どのように過去を回想することが心理的効果を導くのかを検討し,日本の高齢者の回想の特徴と効果的な回想法の実践方法を検討することである。 平成24年度および25年度には,首都圏のシルバー人材センターに登録する65歳以上の地域在住高齢者21名に対して8セションからなるグループ回想法による介入を実施し,介入前後に質問紙調査および心理検査を行うことで,回想法による認知症の予防効果についての検討を試みた。また21名の高齢者からなる統制群を設定した。そのため本研究の参加者は合計42名(平均年齢74.93歳, SD4.8歳) だった。認知機能の測定には,日本版Montreal Cognitive Assessment (MOCA) および前頭葉機能検査FABの語彙流ちょう性課題を用いた。 グループ回想法による認知機能への効果を検討するため,群および測定時期を主効果とする2要因分散分析をMOCAに対して行った。その結果測定時期による有意な効果が認められ,いずれの群でも2回目の測定でMOCAの得点の増加が認められた。しかしながら群と測定時期による交互作用は有意ではなく,認知機能の改善が回想法に参加によるものかは明らかでなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究結果では,グループ回想法による介入に認知症の予防効果があるかどうかは明確ではなかった。その理由のひとつには研究参加者数が十分でないことも考えられるため,平成26年度においても同様の研究を参加者を追加して実施する可能性を検討している。 また前年度には海外の研究協力者に質問紙調査の実施を依頼したが,回答者数が少なく分析に利用可能なデータ数を確保することが出来なかったことから,海外との比較研究については見合わせる予定である。 回想法参加者のうちで効果例と非効果例の回想内容の検討については,上記の研究結果が未確定であるため,その後に検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は前述した研究参加者を追加してさらに介入研究を実施することを検討している。その後に研究参加者のなかから効果例と非効果例をとりあげてそれぞれの回想内容の特徴について質的な検討を行う。研究成果は次年度の国内もしくは国際学会などで発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はグループ回想法による介入研究を実施したが,その際に参加者に支払う謝礼の金額が当初の見積よりを上回ったことから次年度の支出予定額の一部を前倒しで申請した。しかしながら,効率的な使用の結果として前倒し請求分に残額が生じたものである。 残りの助成金の使用計画には特に大きな変更はない。不充分なデータについて引き続き収集を行うとともに,これまでの研究成果をまとめて論文投稿あるいは研究成果の発表を予定している。
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Research Products
(1 results)