2011 Fiscal Year Research-status Report
認知行動療法の効果基盤となる注意制御プロセスの解明
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23730673
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
今井 正司 早稲田大学, 付置研究所, 研究員 (50580635)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 注意訓練 / マインドフルネス / 神経行動療法 / 認知的対処 / 前頭前野 / 強迫性障害 / 社交不安障害 |
Research Abstract |
一般大学生を対象に、注意制御機能と精神障害(強迫性障害:OCD、社交不安障害:SAD)の関連と、注意制御機能を土台とする介入技法(ATT・DM・SAR)の作用機序に関する検討を行った。【注意と精神障害との関連性1】注意制御機能を多面的に測定する尺度(ACQ;今井, 2009)を用いて、OCDやSADの症状との関連を検討した。その結果、OCDは注意制御機能の中でも特に、「注意の転換」において機能不全を示していることが明らかとなった。また、SADにおいては、「注意の転換」と「注意の分割」における機能不全が示された。OCDやSADと関連する症状(特性不安・抑うつ)においては、「注意の転換」における機能不全は示されなかった。この結果から、本研究が対象とするOCDやSADの特徴として、「注意の転換」における機能不全が示唆された。【注意と精神障害との関連性2】注意制御課題の遂行中における脳血流を測定し、OCDやSADの症状との関連を検討した。脳血流の測定においては、「注意の転換」などの注意制御を担っているとされている前頭前野背外側部(DLPFC)を測定箇所とし、NIRSを用いて測定した。その結果、OCDとSADの傾向が高い者は、その傾向が低い者に比べ、脳血流の賦活が低い傾向が示された。【注意介入技法の作用機序】本研究が研究対象としている注意介入技法の効果性を測定する尺度(DMS)を開発し、CBTが対象としている認知的対処変数(確証型・反証型・問題解決型)との関連性を検討した。その結果、注意制御機能を土台とした介入は、OCDやSAD症状の維持要因である確証型認知的対処の影響を低減することが明らかとなった。以上の研究結果をまとめると、OCDやSADの介入においては、その持続要因である確証型認知的対処に固定されている注意を転換することの必要性が明らかになり、臨床的にも有益な知見が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度においては、視線追跡装置を用いた実験などを行う予定であったが、震災に伴う予算額の縮減などの通知があってからは、視線追跡装置を購入する予算の不足を考慮して、それらの装置を使用しない研究から実施する必要性が生じた。したがって、当初の研究計画の進行順とは異なる順序で進行したため、研究内容の重複などが一部で生じ、効率が若干悪い状況があった。視線追跡装置が2月に購入できてからは、研究に必要なパイロットを多くこなすことができ、計画の進捗は安定してきている。当初の計画進行に十分に追いつける程度ではあるが、若干の遅れが現状として確認できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、障害の傾向を有する大学生を対象に介入実験を行う予定である。科研申請時に所属していた大学から、比較的小規模の大学に異動になったことから、スクリーニング調査による実験参加者の十分な確保が出来ないことも考えられる。そのため、当初は、強迫性障害群と社交不安障害群を別々に設定していたが、スクリーニングの状態を見ながら、群設定を変更や縮小化することも対応策として考えている(ただし、強迫性障害と社交不安障害のに対する効果性を測定できることを前提に設定する)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては、実験研究や介入研究を実施するため、それらの実験に使用する研究材料のための費用や、実験参加者への謝礼に研究費を使用する。また、実験協力者(RAなど)の謝礼に研究費を使用することを想定している。研究公表に関しても研究費を使用する予定である、具体的には、本年度で得られた研究データを公表するために、学会参加費や論文公開に関する費用として使用する予定である。
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