2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730674
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 圭 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (40367446)
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Keywords | 社交不安 / 解釈バイアス / 注意バイアス / 自己評価バイアス / 認知行動療法 |
Research Abstract |
本研究では、社交不安に関連する認知処理の偏り、いわゆる認知バイアスを複数同時に計測し、それらが社交不安に与える影響を多面的に検討することを目的としている。認知バイアスの各指標と社交不安の相互作用を明らかにすることで、認知行動療法の技法によってもたらされる社交不安低減のメカニズムを明らかにすること、ひいてはその効果を増強する方法を考案する資料を集めることを目的としている。 平成23年度は、研究に用いる実験課題の一つである解釈バイアスを測定する方法の信頼性・妥当性を確認した。また平成24年度から継続的に、1)同一の実験参加者に各認知バイアスを測定する実験の実施、2)高社交不安者を対象とした集団認知行動療法の実施と、その前後での認知バイアスの測定を行っている。 平成25年度は、上記の2)として、12名の高社交不安者を対象に集団認知行動療法を行い、その前中後で認知バイアスの測定を行う実験を行った。集団認知行動療法の前後で社交不安を始めとする状態の有意な改善が見られ、その前後で自己評価のバイアス、注意バイアスの消失を確認した。また、平成23年度に作成した解釈バイアスの測定方法の問題点が指摘されたため、10名の高社交不安者、9名の低社交不安者を対象に新たな解釈バイアスの測定方法の検討を行った。その結果、社交不安及び状態不安が解釈バイアスに影響を与えていることが確認された。この測定方法を確立するためには引き続きより詳細な検討が必要であることも示された。上記1)については、この課題の確立後、データを再収集する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究で使用する実験課題の一つである、解釈バイアスの測定において、旧来から測定されてきたオフラインの解釈バイアス(社交場面が終了してから回顧的に出来事を想起した際の解釈の偏り)のみの検討では、それが社交場面の解釈を真に反映しているのか、事後に想起される記憶内容を反映しているのか明確でないという問題が指摘された。そのため、今年度、実験課題を見直し、新たにオンラインの解釈バイアス(社交場面が生じているその時に生起している解釈の偏り)を測定できる課題を考案し、その測定の妥当性を検討した。採用する実験課題の変更、追加が生じたことで、データの再収集を行う必要性が出てきている。ただし、旧来よりも精確なデータの収集が可能になったといえ、研究成果はより意義のあるものとなると予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に開発した解釈バイアスの新しい測定方法を用いて、社交不安と状態不安が解釈バイアスに与える影響を明確にする実験を行う。その後、前年度までと同様に、高社交不安者を対象として集団認知行動療法を実施し、その前後で、先の新しい課題も含めた認知バイアスの測定を行い、認知行動療法が認知バイアスに与える影響を明らかにする。 さらに本研究課題を通して蓄積してきてデータを総合し、相関的分析を行うことで、各種認知バイアスが社交不安に与える影響のモデルを示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は年度末まで実験を継続していたが、予想よりも実験参加者の人数が減少し、実験参加者への謝金に残額が生じた。また平成25年度にThe 4th Asian Cognitive Behavior Therapy Conferenceが日本で行われ、当学会への参加に際し、旅費が減額となったことも次年度使用額が生じた原因である。 研究成果の発表のための旅費、研究成果の論文投稿・抜刷の費用、実験参加者への謝金、集団認知行動療法の実施補助、実験・心理検査データの入力・整理のためのアルバイト謝金、データ分析のためのソフト・ハードウェアの購入が主な使用用途となる。
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