2013 Fiscal Year Annual Research Report
外傷体験想起時の認知・行動モデルに基づく心理学的介入の構築とその効果の検討
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23730678
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
大澤 香織 甲南大学, 文学部, 講師 (30462790)
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Keywords | トラウマティック・ストレス / 外傷的出来事の記憶 / 想起 / 介入効果 |
Research Abstract |
最終年度では前年度に引き続き,介入プログラムの効果について検討し,その総括を行った。研究協力者募集の広報を通じて参加を希望した者のうち,研究協力に同意し,プログラムとフォローアップ(実施1・3ヵ月後)を完遂した6名(男性2名,女性4名,平均年齢36.33±12.23歳)を分析対象とした。プログラムは,全参加者に外傷後ストレス障害(PTSD)の主症状の1つである「侵入・再体験症状」が認められることを確認した上で行われた。プログラムは週1回(60~90分),計6~8回であった。 その結果,トラウマとなるような出来事を体験した後に生じる心身の反応(外傷性ストレス反応)の程度は,プログラム実施直後および実施3ヵ月後に有意に低減していた(いずれもp<.05)。PTSD症状全体の重症度も実施後,実施1・3ヵ月後に低減し(すべてp<.05),特に「侵入・再体験症状」の改善がプログラム実施後に有意に認められた(p<.05)。また,出来事を想起した際の「肯定的認知コーピング」の実行頻度が実施3ヵ月後に増加していた(p<.05)。この対処方略は外傷性ストレス反応の低減につながることが示唆されている(大澤,2012)。当該プログラムは出来事の想起に対する適切な対処スキルを身につけることで,外傷性ストレス反応の低減に有効な内容になっていることが考えられる。 さらに,全般的な生活機能障害についてはプログラムによる影響を受けなかったものの,症状による機能障害は実施3ヵ月後に有意に改善していた(p<.05)。出来事に関する治療を受けることへの抵抗感についても,実施3ヵ月後に有意に低減していた(p<.05)。したがって,当該プログラムは外傷性ストレス反応の改善や症状による機能障害の回復のみならず,治療に対する抵抗感を下げる効果もあると考えられ,症状の慢性化の予防にも寄与する可能性が考えられる。
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Research Products
(4 results)