2011 Fiscal Year Research-status Report
自殺ハイリスク地で保護された自殺ハイリスク者の特徴と支援の在り方について
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23730682
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Research Institution | Koyasan University |
Principal Investigator |
森崎 雅好 高野山大学, 文学部, 助教 (00581159)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 自殺ハイリスク地 / 自殺ハイリスク者 / 自殺念慮 / 社会的孤立 / MMPI / BAQ / P-F study |
Research Abstract |
本研究は、自殺ハイリスク地で保護された自殺ハイリスク者の実態と心理的特徴の把握、及び支援の在り方を提示するために行われている。調査地点を和歌山県西牟婁郡白浜町の三段壁周辺とし、調査対象者はこの地で保護され、帰る場所がないために共同生活(NPO法人白浜レスキューネットワークが運営している)を行っている者である。調査内容は、この地に至るまでの経緯、生育歴、職歴などに併せて、居住地近辺ではなく遠方の自殺ハイリスク地を選択した理由を聴取する面接調査と、MMPI、日本版Buss-Perry攻撃性質問紙(BAQ)、P-F studyの3つの心理検査の実施である。これまで面接を行った被保護者数は、53名(平成22年度からの調査人数を含む)である。被保護時点での職歴は、無職者が多く、経済・生活問題や頼るべき親族がいないなどの「社会的孤立」状況がこの地に至る一つの影響因であると考えられる。また、この地を選択した理由として、「確実に死ぬ」ことができる確実性や、「家族との思い出の地」という郷愁の念、「奇麗な海で死にたい」という最後の願望が挙げられる。心理検査の結果から、自殺ハイリスク者は、MMPIの基礎尺度であるD・Pt・Sc尺度の得点が高い傾向と追加尺度のEs尺度の得点が低い傾向がみられ、BAQでは、敵意因子の得点が高いことが見出されている。P-F studyでは顕著な差異はみられていない。保護されてから自立段階に至った時点で、再度同様の検査を施行しているが、MMPIでは、上記の尺度のいずれにも得点に変化がみられ、大幅な改善に至っている。共同生活では、基本的な衣食住の提供を保障し、生活上での問題点には運営者が随時相談にのる対応をしており、これらが被保護者の回復の支えになっているものと考えられる。次年度も引き続き調査を行い、自殺ハイリスク者の特徴の把握と効果的な支援方法を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自殺ハイリスク地(三段壁周辺)での白浜レスキューネットワークによる保護件数は、年間約100件である。そのうち共同生活に至った者への面接は調査者が随時行っている。平成23年度の調査実数は21名である。これまでの調査面接では、全員が協力的に応じている。心理検査は、即時の記入は求めず、対象者の心理的余裕がある時に記入してもらうように配慮し、調査者の次回訪問時に回収を行っている。以上のことから、調査はおおむね順調に進展しているものと考えている。ただし、面接後に共同生活から行方不明になってしまう者もいるため、心理検査の回収率は100%ではない。また、自立後の心理的変化および支援効果の検証のために、再度、面接及び心理検査の実施を依頼しているが、対象者と調査者との日程が合わないことや、自立後に遠方に居住する者などがいるため、当初予定の人数よりも対象者数が少ない。次年度は、調査訪問日の調整などを行い、できるだけ多数の対象者との面接を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度使用金の発生の理由について、物品費は、データ整理用のためのノート型PC(予算130,000円相当)を購入する予定であったが、新たなデータ分析の必要性が生じ、ノート型PCを購入せず、統計解析用ソフトAmos(75,600円)を購入したためである。旅費は、高速道路の利用を控えたため、また、謝金等は、自立後の被保護者との面接日程が合わず、調査面接を行うことができなかったためである。次年度は、調査訪問日の柔軟な調整を行い、対象者との面接を随時行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用について、物品費は、事務用品購入などに充て、また、旅費と謝金等の使用は、調査訪問日を柔軟に設定し、自立後の被保護者との面接機会の増加に充てる。
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