2012 Fiscal Year Annual Research Report
自殺ハイリスク地で保護された自殺ハイリスク者の特徴と支援の在り方について
Project/Area Number |
23730682
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Research Institution | Koyasan University |
Principal Investigator |
森崎 雅好 高野山大学, 文学部, 助教 (00581159)
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Keywords | 自殺ハイリスク地 / 自殺ハイリスク者 / 自殺念慮 / 社会的孤立 / MMPI / BAQ / P-F スタディ |
Research Abstract |
本研究は、自殺ハイリスク地で保護された自殺ハイリスク者の実態とその心理的特徴の把握、及び支援の在り方を提示することを目的としている。調査地点は和歌山県西牟婁郡白浜町の三段壁周辺とし、調査対象者はこの地で保護され、主として共同生活を行っている方を対象とした。対象となった方々は、自殺念慮を抱いている方や過去に自殺関連行動を行った方、及び自殺念慮はないが自ら保護を求めて共同生活を始めた方である。調査方法として、この地に至るまでの経緯、職歴、この地を選択した理由などを聴取する半構造化面接と、MMPI、日本版Buss-Perry攻撃性質問紙(BAQ)、P-Fスタディの3つの心理検査を行った。調査面接者総数は88名(男性74名・女性14名)である。 面接調査では、特に自殺ハイリスク地を訪れる心性には、「死の確実性」、家族との思い出の地や奇麗な海で死にたいという「郷愁の念」、迷惑がかからないという「死後の配慮」、遺体が上がらないという考えにみられる「存在の消失」があることが明らかとなった。また、自殺念慮者及び自殺関連行動を行った者と非自殺念慮者との心理検査の比較検討を行った結果、MMPIでは、前者の抑うつに関連する尺度と自己概念尺度(I-SC)の平均得点が70点以上と高く、かつ後者の得点よりも有意に高かった。BAQでは、敵意因子の得点に有意傾向がみられ、P-Fスタディでは顕著な差はみられなかった。保護されてから自立する段階に至った時点で、再度、同様の検査を行ったが、MMPIでは多くの尺度得点が正常範囲内となり、顕著な改善に至っている。また、再度の面接調査でも自殺念慮は消失している。居場所の提供及び細かな支援が奏功したものと思われる。現時点では、調査対象者数が少ないため、今後も引き続き調査を行い、自殺ハイリスク者の特徴及び効果的な支援方法を明らかにすることが課題である。
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