2012 Fiscal Year Research-status Report
成人型アトピー性皮膚炎患者に対する心理的アプローチプログラムの開発
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23730683
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
角田 美華(樋町美華) 福山大学, 人間文化学部, 講師 (20550974)
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 不安 / 痒み |
Research Abstract |
平成24年度は,平成23年度の調査結果から成人型アトピー性皮膚炎(AD)患者の痒みに対する不安軽減プログラムを作成し,実際にそのプログラムの効果検討を行う計画であった。そのため,まず平成23年度の調査結果をもとに事前および事後調査を除いた3回から構成されるプログラムを作成し,効果指標の検討を行った。3回のプログラム内容としては,(1)ADについての心理教育およびAD患者が抱える不安および痒みに対する不安についての心理教育。(2)対処方法の獲得①:ディストラクションの習得として,痒みや不安を経験したときにその状況から離れるためにどこででも実施可能なディストラクション法を理解しその方法の習得を目指す。(3)対処方法の獲得②:リラクセーション法の習得として,①と同様に痒みや不安が生じた際にそれらを対処するための方法としてリラクセーション法の中でも筋弛緩法を習得し,各自実施することが可能になることを目指す,といった要素を含め上記の内容で構成されている。また,最終的には患者に合わせてディストラクション法あるいはリラクセーション法のいずれかの実施でも効果的であるか検討する予定である。このようにプログラム内容および効果を検討するための指標を決定している間に皮膚科に通院する患者を対象にプログラム参加の呼びかけを皮膚科医に行ってもらった。しかし,思うように患者に参加協力を得られなかったことから,対象病院を広げ再度声掛けを行った。また,同時に3回のプログラム内容の理解度や実施の難易度を確認するため,リーフレット形式にしたものを皮膚科医およびADと診断されている成人男女各1名に提示し検討を行った。その結果はすでに,福山大学こころの健康相談室紀要第7巻で公表している。以上のことから平成24年度は,当初の計画から遅れているものの,プログラム内容の妥当性が検討されたことから重要度は高いと判断できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現在までの達成度としては,遅れている状況にある。現在の状況を作り出している理由について自己点検によって評価を行ったところ,対象者の募集方法に問題があったと指摘することができる。細かな理由としては,第一に対象者が皮膚科に通院する患者であることがあげられる。一般的に,皮膚科に通院する患者は心理面についての問題は皮膚症状と関連しておらず,そのため皮膚科で心理的な側面を取り扱った治療をするといったことが一般的でないと考えられる。つまり,患者自身が皮膚科領域で心理面を取り扱うことに慣れていないということがあげられる。第二に,協力を求めていた皮膚科に通院している患者の多くが薬を取りに来ることを目的として通院していた者がほとんどであった。つまり,自分でAD症状をある程度コントロール可能な患者が多く,心理面への介入の必要性を感じていなかったことが推察される。またその一方で,AD症状と心理的要因とのつながりといった部分の啓蒙がまだまだ行われておらず,不安などの心理的問題がAD症状を悪化させるといったことを理解していない者が多いことも協力を得られにくい状況作り出していると考えられる。最後に,調査研究であれば,通院した際に回答しその場で提出することができるため,患者にも負担が少なく協力も得やすいと考えられるが,介入となると日程を調整しわざわざ来院することが求められるため,負担が大きいと判断されたと考えられる。さらに,参加協力方法として研究者が作成した簡単な案内をもとに皮膚科医から説明をうけるのみといった方法であったことから,実際の内容がわかりにくく参加協力が困難な状況を作り出していたと考えられる。以上のような理由から,介入への参加者を募ることが難しく,当初の計画よりも遅れている状況にあると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,平成24年度に計画をしていた3回から構成されるのプログラムの実施を進める。昨年度,計画通りに進まず研究の実施を妨げたと考えられる要因を排除するため,まずは対象者の募集を再度行うこととする。その際,AD症状と心理面の関係について理解が得られるよう募集の方法を新たに検討し直し,また協力を得るための皮膚科自身の数を増やしていくこととする。その際,できるだけADと心理面の関係に関心を持っていると考えられる皮膚科を対象とすることとする。ただし,研究者が平成25年度より広島県より愛知県へと異動したことにより,当初予定していた地域を中部地方にまで広げて研究を進めるように変更を行うこととする。この変更に伴い,研究を遂行する上で新たな皮膚科医および皮膚科に通院する患者に協力を求める必要があるが,すでに協力を得られる皮膚科を検討するため,1名の皮膚科医とともに話を進めている状況にある。また,大きく実施内容を変更する予定はないが,参加者の都合により集団実施が困難な場合は個別でのプログラム実施となることが考えられる。この場合,集団での実施者と個別での実施者を分け,効果検討を行うこととする。つまり,集団となる場合でも個別なる場合でも本研究の計画を大きく変更することはないといえる。平成25年度の研究費に関しては,主にプログラム実施の際の配布資料や協力患者への謝礼となることが考えられるが,これは成24年度から平成25年度に使用すると当初予定していた通りのものである。また,プログラム効果検討を行うため,結果が得られ次第それらを公表するための学会参加費等も変更はない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の使用計画としては,平成24年度に実施開始予定であったプログラム実施のための平成24年度に作成した配布資料の印刷やプログラム参加者への謝礼が中心となる。まず配布資料については,プログラムの理解を促進するために補助的な資料として必要になる。この資料は,より良い理解を進めるため カラー印刷を検討しており,そのためのインク代および用紙代がここには含まれる。また,謝礼については実際にプログラムへの参加1回につき,決められた金額あるいは物品を支払うこととする。やはり,効果検討といったプログラムへの参加はAD患者にとって大きな負担となると考えられることから,無償で参加協力を求めることは適切ではないといえる。互いの,利益を考慮した計画にすることを検討している。 さらに,状況によっては協力者となるAD患者が研究者が所属する地域外(平成24年度に実施予定地も含む)となることがあるため,移動のための経費などにもあてることとする。また,平成25年度においてはプログラムの実施内容やその効果についての成果公表および啓蒙活動が重要となることから,学会参加費や投稿論文にかかる経費も使用計画の中心になるといえる。本プログラムの効果が実証された後の啓蒙活動については,どこの皮膚科でも実施可能なように皮膚科医はもちろん各自でも行えるようなプログラムマニュアルを作成し,配布することを検討している。実際に,プログラムの効果を実証し終了するといった研究では,その研究の必要性が欠けると考えられるため,こういった活動まで行うことを平成25年度は視野に入れている。 なお本研究計画では,プログラムの実施にあたり,効果指標となる質問項目等を印刷した資料も必要となるため,それらを印刷するためのインク代および用紙代も平成25年度の研究費の中に含めることとしている。
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