2011 Fiscal Year Research-status Report
中高年者のワーク・ファミリー・シナジーに関する心理プロセスの解明
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23730690
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
富田 真紀子 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 予防開発部, 研究員 (40587565)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 仕事と家庭の両立 / 中高年者 / 精神的健康 / ワーク・ファミリー・コンフリクト / ワーク・ファミリー・ファシリテーション / ワーク・ファミリー・シナジー |
Research Abstract |
本研究は「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の偏りない地域住民を対象とした大規模なコホート研究のデータを用い、中高年者のワーク・ファミリー・シナジー(仕事と家庭の相互作用)に関する心理プロセス解明を目的としている。具体的には、ワーク・ファミリー・コンフリクトとファシリテーション(WFC・WFF)尺度の作成を行い、心理プロセスモデルを構成する。本年度は以下の1.2.を実施した。1.データ収集:NILS-LSAの第7次調査(H22年7月からH24年7月まで)の心理面接調査により、WFC・WFF尺度、個人背景要因、仕事と家庭の規定要因、精神的健康、などのデータを収集・蓄積を進めた。現在も継続中である。2.成果:NILS-LSAの第5次調査のデータを用い、中高年有職女性の仕事コミットメントと抑うつの関連に、年齢と就業形態による調整効果があることが示された。この知見は学会にて発表を行った。 つぎに第7次調査(現在継続中につき,H24年2月までの期間に限定)に参加した1868名のうち有職者である1088名(男性627名,女性461名)を対象とし以下の分析を実施した。AMOSを用いた確認的因子分析を行い、中高年者のWFC・WFF尺度は想定通りの因子構成が確認された。性・年代別に見たところ、男性では「仕事→家庭葛藤」が高く、女性では「家庭→仕事葛藤」が高く、性別役割分業意識の影響が推測された。年代に関しては、40代では60代よりも「仕事→家庭葛藤」が高く、60代では40代よりも「仕事→家庭促進」が高く、中年に比べ高年になると両立に対するネガティブな評価が低下し、ポジティブな評価が高まると考えられた。以上より、中高年者のワーク・ファミリー・シナジーの特徴が見出され、心理プロセス解明のために重要な知見が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の予定通り、データ収集・蓄積が順調に進められており、第7次調査終了予定のH24年7月には解析に耐えうる十分なデータが揃う予定である。 また、第5次調査のプールデータを用い、仕事コミットメントと精神的健康の関連について検討を実施した。この知見は、今後の7次調査におけるWFC・WFFとの関連を検討する上でも役立つものであった。さらにデータ収集の途中段階ではあるが、第7次調査(H24年2月まで)のデータを用い、WFC・WFF尺度の解析を実施したところ、仮説通りの尺度構成であることが確認され、性・年代別にも差異があることが確認されている。今後、データ収集が完了後、さらに解析を進めるることで、心理プロセスモデルを作成することが期待できる。以上より、本研究は概ね計画通りに進展しており順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(H24年度)の7月には本研究の基幹項目であるWFC・WFFのデータ収集が完了予定である。そのため、予定通りデータの収集・蓄積を進め、H24年7月にデータ収集を完了する。その後、蓄積されたデータを用い、以下の検討を行う。1.先に確認したWFC・WFF尺度に関して、第7次調査の完全データセットを用いて、尺度構成を再度確認し決定をする。2.1で明らかになったWFC・WFF尺度を規定するデモグラフィック要因よび仕事と家庭の規定要因からの影響を共分散構造分析によって明らかにする。3.2で構成されたモデルをもとに、精神的健康を増進する影響を明らかにするために、多母集団同時分析を実施し、性・年代による影響過程の違いを示す。4.成果の公表のため、学会発表・学術雑誌投稿を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究初年度は、東日本大震災により甚大な被害が生じ、緊急に財源確保のため交付額の減額変更を行う可能性があることから、補助金の慎重な執行に留意するよう通達があった。そのため、旅費(学会参加や資料収集のための講習会参加費)や物品費の使用を控えたため、H24年度への繰り越し金が生じている。 H24年度は繰り越し金を含めて、人件費・謝金(心理調査実施の際には、臨床心理士・臨床心理学専攻の大学院生を雇用するため)、物品費(文具・書籍など)、旅費(研究成果発表のための学会参加費・文献や資料収集するための学会・研修会等への参加費)、その他(論文別刷費・英文校閲費)などに使用予定である。
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Research Products
(2 results)