2012 Fiscal Year Research-status Report
視覚及び前庭覚による自己運動情報が聴覚空間形成に及ぼす影響の解明
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23730693
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
寺本 渉 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30509089)
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Keywords | 音源定位 / 自己運動 / ベクション / 多感覚相互作用 |
Research Abstract |
自己運動時には感覚入力は時々刻々と変化する。それにもかかわらず,我々は周囲の環境を安定的にとらえ,適切な働きかけを行うことができる。この知覚の背後には自己運動情報を巧みに利用した情報処理の仕組みがあると考えられる。本研究では,周辺視野も含む視野全体の動きによって与えられる視覚的自己運動情報と前庭情報が,自己運動時の聴覚空間形成において果たす役割を,自己運動の方向/加速度/速度や聴覚刺激の提示位置を系統的に操作し,その際の音源定位行動を測定することによって明らかにすることを目的とする。本年度は,視覚による自己直線運動情報が聴覚空間形成に及ぼす影響を調べた。視覚的自己運動情報の提示は,放射状のオプティカルフローをプロジェクタを通じて大型スクリーンに投影することによって行った。聴覚刺激の提示には,シミュレートされた進行方向に沿って8 degおきに(真横位置のみ4 degおき)11個並べられたスピーカアレイを用いた。前進/後進をシミュレートしたオプティカルフローは,最初に等速運動(0.4 m/s)として提示した。観察者が自己運動感覚(ベクション)を感じた後は等加速度運動(0.3 m/s/s)に変え,速度が1.5 m/sに達した瞬間に,聴覚刺激を任意の位置から提示し,聴取者に定位させた。また,オプティカルフローを提示しない静止条件も行った。その結果,視覚的な加速度運動情報によって,前進後進かかわらず,真横に感じられる音の位置が,進行方向側にシフトすることがわかった。一方,ベクションが感じられていない場合には,オプティカルフローを提示してもこの現象が生じないことから,視覚運動情報が自己運動情報として利用された結果生じる現象であることがわかった。次年度以降,自己運動情報をさらに操作して,現象の一般性が実証できれば,自動車運転時の音情報提示技術開発等に説得力のある提案ができると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己運動情報を様々に操作しながら聴覚空間形成に及ぼす影響を調べるという目的に対して,実験が順調に進み,成果の一部は査読付き学術論文としてすでに刊行され,また,招待講演に招かれるなど一定の反響もある。ただし,三半規管系の自己運動情報が聴覚空間形成に及ぼす影響については,予備実験が終了したのみであり,平成25年度には集中的に行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までは,視覚情報,(視覚+前庭)情報または前庭情報を自己運動の情報源とした直線運動を主に対象として実験を組み立て,検討を行った。平成24年度途中からは,ヨー軸周りの自己回転運動の検討も開始したが十分ではない。そこで,平成25年度はヨー軸周りの自己回転運動を集中的に扱う。実験は,プロジェクタを通じて大型スクリーンにランダムドットパターンを立体的に投影することによって行う。視覚運動刺激の速度・加速度・回転方向を系統的に操作し,自己運動感覚を生起させ,その間に事前に決定したタイミングで聴覚刺激を任意の位置から提示し,聴取者に定位させる。実際の位置に対する偏位量を自己運動情報との関係を分析することによって,自己回転運動時の聴覚空間マップを作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)