2012 Fiscal Year Annual Research Report
日本語と中国語の二言語併用者における言語間の干渉を低減する脳基盤の解明
Project/Area Number |
23730700
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大井 京 名古屋大学, 情報科学研究科, 研究員 (70579763)
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Keywords | 二言語併用者 / 意味処理 / 中国語 / 日本語 / 近赤外分光法 / 日中同形語 / 発話 / 身振 |
Research Abstract |
本研究では,二言語併用者が単言語使用者よりも優れた認知機能を示すことと,二言語併用者が言語間の干渉を解決する脳内機構との関連に着目し,二言語併用者の言語処理について,行動実験と生理実験を用いて解明することを目的とした。具体的には,次の3点を実施した。 1. 自発的な「発話」の言語処理に関する検討。2. 実験遂行に必要な刺激材料の整備。3. 2.の刺激材料を利用した「読み書き」の言語処理に関する検討。 1. に関しては,第2言語(second language: L2)における発話の負荷を低減する要因について検討するために,中国語を母語(first language: L1)として,日本語をL2とする二言語併用者に対して,アニメーション観察後にその内容を聞き手に話して伝達する課題をL1とL2の条件で実施し,課題遂行中の脳活動を近赤外分光法(NIRS)で測定した。その結果,二言語併用者によるL2の発話において,自発的な身振が発話の負荷を軽減し,このことが,身振の産出に関与する左半球の下前頭回の賦活量の上昇と,発話の構築に関与する左半球の上側頭回後部の賦活量の低減として反映されることを明らかにした。 2.に関しては,3. の生理実験において用いる刺激材料である日中同形語(例,“産地”)と語釈(例,「物品を産出する土地。」)の調査を行った。 3. に関しては,中国語をL1として,日本語をL2とする二言語併用者に,視覚呈示された日中同形語と語釈の対応関係について「ターゲット言語(日本語または中国語)として知っている」か,「知らない」かの判断を求める心理課題を実施し,課題実施中の脳活動をNIRSを用いて測定した。実験の結果,行動データから,二言語併用者によるL2の意味処理において,L2の知識がL1からの干渉を低減することを明らかにした。生理データは,現在解析中である。
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Research Products
(3 results)