2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23730705
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 一憲 大阪大学, 人間科学研究科, 講師 (80506999)
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Keywords | 比較行動学 / 行動遺伝学 / 霊長類学 / ニホンザル / 分子生物学 |
Research Abstract |
個体差を生み出す要因を明らかにすることは、ヒトが多様で複雑な社会を形成する理由の解明に繋がる。本研究では、ヒトに近縁で複雑な社会を形成するニホンザルを対象とし、彼らの社会行動の個体差や地域間変異に影響を与える遺伝的要因を分子生物学的手法を用いて検討することを目指した。 本年度も給餌実験によって、勝山集団(岡山県真庭市)と淡路島集団(兵庫県洲本市)のニホンザルの寛容性を比較した。給餌実験とは、集団が滞在する餌場に直径8mの円を描き、その内に広く小麦をまいた後、その円の中で小麦を拾って食べたサルの頭数とその際に生じた攻撃行動に関連した音声の数をカウントする実験のことである。解析の結果、攻撃交渉の頻度に関して、2集団の間に大きな差は見られなかったが、勝山集団では全体の14%の個体が円内で小麦を拾った一方、淡路島集団では70%の個体が円内で小麦を拾っていた。これらの結果は、淡路島集団のニホンザルは、勝山集団と比較して、社会的緊張が高まる状況であっても、攻撃行動が起こりにくく寛容な行動傾向を持つことを示している。 糞より収集したDNA試料をもとに、攻撃性と関連するとされる神経伝達関連遺伝子の特徴を勝山集団と淡路島集団の間で比較した。ニホンザルにおいて遺伝的多型が見られた2つの候補遺伝子(モノアミンオキシダーゼA遺伝子: MAOALPR、アンドロゲン受容体遺伝子: ARQ)に関して、勝山集団と淡路島集団の間でアリル頻度に有意な偏りが見られた。この結果は、淡路島集団が示す特異的な寛容性に、遺伝的背景が存在する可能性を示唆している。
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Research Products
(7 results)