2011 Fiscal Year Research-status Report
睡眠・高次脳機能調節におけるアストロサイト脂質代謝の役割
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23730706
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
近久 幸子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00452649)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脂質代謝 / PPARα / 高次脳機能 |
Research Abstract |
申請者は、脂質代謝に障害のあるPPARα-knockout (KO) マウスの睡眠を測定した。その結果、KOマウスは野生型 (WT) マウスと比較して暗期後半の睡眠量が減少していたが、脳波デルタパワーは24時間にわたって増大していた。そこで、慢性的な不眠状態であるKOマウスを用い、記憶・学習能 (8方向放射状迷路、Novel object recognition test、Passive avoidance等) および不安・うつなどの情動行動 (Open field・高架式十字迷路、強制水泳テスト等) についてWTマウスとの比較を行った。Passive avoidanceでは、KOマウスはWTマウスに比べて電気刺激翌日に暗箱に入る潜時が有意に長く、これは情動記憶能がKOマウスで高まっていることを示す。Passive avoidanceのような情動変化を伴う学習には、扁桃体におけるカテコラミン系の影響が報告されているため、扁桃体のカテコラミンをHPLCにより定量した結果、ドーパミンおよびドーパミン代謝産物がKOマウスにおいて増大していた。さらに、ドーパミン分解酵素であるComt (カテコールO-メチル基転移酵素) のmRNA発現量を調べたところ、KOマウスで顕著な低下が認められた。またTh (チロシン水酸化酵素) のmRNA発現量もKOマウスで高くなる傾向がみられた。以上のことから、KOマウスでは扁桃体におけるドーパミン量が多く、分解されにくい状態であり、シナプス間隙量も増加していると予想される。今回の実験により、中枢PPARαの高次脳機能における役割の一端が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究の現在の達成度は概ね順調であるが、マウスの大脳皮質アストロサイト内のin vivoカルシウム動態についてはまだ検討できていないので、「おおむね」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に従い、マウスの脳のアストロサイトにおいて、AMPKやPPARsを始めとした代謝関連物質がどのように変化するかについて、免疫組織化学染色により解析を行うことで、慢性不眠および中枢代謝変化がアストロサイトの機能変化や形態変化に及ぼす影響を解明する。また、遺伝子改変動物を用いた実験についても、次年度以降はすすめていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会参加のための旅費について、外部の助成金で渡航費を獲得できたため、研究費の繰り越しが生じた。繰り越し分は、平成24年度の国際学会旅費に充当させ、その他については申請書に従い使用する。
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