2011 Fiscal Year Research-status Report
加齢にともなう衝動性の抑制と共感性の変化に関する実験的研究
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23730711
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
川合 南海子 (久保 南海子) 愛知淑徳大学, 心理学部, 講師 (20379019)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 高齢者 / 抑制 |
Research Abstract |
加齢にともなう衝動性の抑制と共感性の変化について検討するために、本年度は、高齢者に対する犠牲バイアスの有無について、歩道橋問題を用いて検討した。歩道橋問題とは,歩道橋の下を通る線路で電車が暴走し,線路で作業中の5人に向かっている状況において,歩道橋の上にいる自分のそばに立っている男性を突き飛ばして電車に衝突させ,電車を止めることができるとき,その男性を突き落とすことが適切かどうかを問う道徳問題である。本研究では,若年成人層である大学生が,自分にとっての外集団とも言える高齢者に対して,その犠牲を仕方が無いと考えているバイアスを有しているかどうかを検討した。その結果,高齢者に対して犠牲にしても良いという割合は,他の年齢層を対象にした場合に比べて有意に高かった。これは,高齢者に対して,他の年齢に比べて犠牲にすることへの抵抗感や罪悪感,あるいは不快情動の生起が小さいことが考えられる。さらに,自分たちと子どもに対する犠牲にしてもよいと考える得点に差が無い一方,高齢者のみに対して有意に見捨ててもよいと判断していることから,少なくとも大学生などの若年層は,高齢者を外集団と捉えるバイアスを有していることが示唆された。 さらに、高齢者の抑制機能について検討するために、フランカー課題とサイモン課題を用いて検討した。大学生と高齢者で比較したところ、高齢者はフランカーよりもサイモンの方で効果量が大きく、大学生は課題による効果量の違いはないことが明らかになった。つまり、抑制機能は加齢にともなって一律に低下するのではなく、隣接する標的によって誘発される誤反応の抑制よりも、位置によって誘発される自動的な誤反応の抑制機能の低下が顕著であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、当初の計画通り、歩道橋問題を用いた調査を行い、高齢者と比較するための若年層のデータを収集・分析することができた。対象の人数としても十分である。 また、高齢者を対象にコンピュータを用いた抑制課題を2種おこない、高齢者および比較するための若年層のデータを収集・分析することができた。今後,高齢者の脳機能の計測をするための準備としても十分なシステムが整備でき、順調に稼働している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き行動的データを収集・分析することに加えて,脳機能の計測をおこなっていく予定である。機器を購入して環境を整備するとともに、高齢者を対象とした場合の特有の問題にも留意して、質のよい生理的データを収集・分析することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は、配分額が不確定であった時期があったため、高額機器である生体アンプ等の購入を控えて、行動データの収集を重点的におこなった。次年度は、本年度から繰り越した研究費と合わせて、生体アンプ基本システムおよび計測用アンプを購入し、行動データに加えて、課題遂行時の生理的データを収集・分析する。
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Research Products
(3 results)