2011 Fiscal Year Research-status Report
盲点補完における情報統合過程と脳内基盤の実験心理学的・脳生理学的研究
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23730713
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
蘭 悠久 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, ポストドクトラルフェロー (10437767)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 実験心理学 / 盲点 / 知覚的補完 |
Research Abstract |
本研究全体の目的は、盲点補完における盲点の片側の情報および両側の情報の統合過程と脳内基盤を検討し、それらの知見をもとに、盲点補完のメカニズムを考察することである。本年度は、(1)盲点物体片側補完における異方性の実験と(2)盲点運動線分片側補完の際の脳波測定を行った。(1)盲点物体片側補完における異方性実験の結果は、盲点下側に提示した刺激の補完が盲点上側・左側・右側に提示した刺激の補完よりも生じやすいことを示した。これは研究代表者らが先に行った実験で示された盲点の片側に提示された運動線分における補完の量の下側優位性と同じ傾向を示す。したがって、盲点片側補完においては下側刺激優位(片側補完下側優位性)といえる。この下側優位性は、上側と下側の両方が右側および左側に対して優位である垂直優位性とは異なる点で新しい知見かもしれない。先行研究において盲点両側補完における直線補完水平優位性あるいは曲線補完垂直優位性が示された[1]が、盲点片側補完の下側優位性は盲点両側補完とは異なるメカニズムで生じている可能性があり、盲点補完のメカニズムを検討するのに興味深い知見である。現在、この下側優位性の原因について考察中であるが、今のところ、盲点の両側の情報の統合過程が下側優位性の原因であるという説明はできていない。(2)盲点運動線分片側補完の際の脳波測定は、測定のための準備段階である予備行動実験と予備脳波測定を行い、本測定を開始した段階である。現在、観察者2名の本測定が終了したので、残りの観察者については来年度に測定する。[1]Araragi, Y. (2011). Anisotropies of linear and curvilinear completions at the blind spot. Experimental Brain Research, 212, 529-539.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた知覚実験は終了した。また、脳波測定実験の行動測定の予備実験と脳波測定の予備測定までは終了した。一方で、申請者および共同研究者の所属機関異動の準備やそれに伴うほかの研究活動に時間が割かれたため、脳波測定実験の本実験の進み具合がやや遅くなった。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者の所属機関異動により、申請者のメインの研究が本科研費研究になったので、脳波測定実験の遅れを挽回し、意欲的に進める。また、終了した知覚実験の結果は予想通りにならなかったが、その知覚現象のメカニズムはまだ見当がつかないけれども、盲点補完のメカニズムを検討するうえで鍵となる重要な知見とも考えられるので、共同研究者と相談しながら、柔軟にこの現象の原因・メカニズムを検討する。また、並行して、続きの知覚実験を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度(24年度)使用額」が生じた理由は申請者および共同研究者の所属機関異動のためにその準備などにより、実験の進行がやや遅れたため、予定していた被験者への謝金および旅費の分だけ未使用額が生じたが、23年度行う予定であった残りの研究計画と併せて実施する。申請者および共同研究者の異動による環境変化を考慮して、25年度に予定していた脳波測定実験を、前倒しして、23年度から取り組みはじめたため、次年度(24年度)は23年度予定であった残りの研究と25年度予定の研究を進め、24年度予定していた研究を25年度に行う予定である。
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