2011 Fiscal Year Research-status Report
時系列の聴覚表象に頑健性を与える知覚属性間の交互作用に関する心理物理的研究
Project/Area Number |
23730715
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
松井 淑恵 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (10510034)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 実験心理学 / 知覚 / 聴覚 / ピッチ / サイズ / 時系列パタン |
Research Abstract |
我々の聴覚系は、受け取った音響波形から波形の周期を抽出し、ピッチとして知覚し、ピッチの時系列を音声のイントネーションやメロディとして認識する。それらは異なるピッチの範囲で再現されても同定される。波形の周期とは独立して、スペクトルのパタンも符号化して聴覚皮質まで伝達されており、ピッチ以外の音の要素である音色として認識される。このふたつの情報は独立していると考えられているが、ピッチの時系列上の変化である音程の知覚に音色が影響を与えることは複数の先行研究で実証されており、ピッチと音色の間にはその時系列パタンの知覚に必要な情報を処理する過程で何らかの関わりがあると考えられる。また、スペクトルのパタンから聴覚系が音源の共鳴体のサイズを抽出できる計算モデルが構築され、このモデルを支持する心理実験結果が報告されている。サイズはピッチと同様1次元的な表現が可能である。互いに独立であると同時にサイズとピッチの両方が聴覚表象に影響するという条件で考えられるのは、サイズとピッチの次元が2次元平面的な知覚空間を構成しており、その上での時系列パタンを利用できる可能性である。この仮説の検証は、音響波形に対して複数のコーディングを行う我々の聴覚系が、どのように情報を統合しているかということを明らかにする上で重要である。本年度は、聴覚の時系列パタンを知覚する際、音響信号から抽出される音のピッチと共鳴体のサイズによる2次元的なマッピングとして知覚表象を持ちうるか、を検証した。その結果、我々の聴覚系はピッチとサイズの次元が直交している2次元空間上の時系列パタンを利用できない、ということが明らかになった。直交していない2次元空間を持つ可能性、例えば、ピッチとサイズが相関している場合により良く時系列パタンを同定できる可能性については、次年度の実験で確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究で提案されている聴覚の計算モデルに対するフィードバックにまでは至らなかったものの、予備実験からデータを追加し、仮説が検証できた。現在、投稿用の論文を執筆しており、上半期以内に投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載した通り、心理実験による仮説の検証を進める。検証の内容は、ピッチと音源の共鳴体サイズが相関する時、時系列パタンの認知が促進されるか、ということになる。前年度と異なり、予備データがほとんどない状態からの検証となるため、可能な限り早く予備実験を開始し、実験方法を策定する。また、前年度に得られたデータは、上半期以内に学術雑誌に投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は科研費の交付決定と執行が5月まで遅れた。コンピュータや一部の実験機材に関しては、年度初めには必要であったため、当該科研以外の研究費より充当した。このために次年度使用額が発生した。次年度の予算は、実験のための人件費を確保しつつ、研究発表のための費用よりは論文投稿のための費用に重点を置く予定である。国際会議への参加は実験の状況によって決定する。
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