2011 Fiscal Year Research-status Report
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23730717
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Research Institution | St.Mary's College, Nagoya |
Principal Investigator |
高瀬 慎二 名古屋柳城短期大学, その他部局等, 講師 (60565886)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 視知覚の安定化 / 両眼視野闘争 / 多義図形 |
Research Abstract |
本研究の目的は、人間の視知覚の安定化機構を心理物理実験により解明することである。研究代表者は視知覚の安定化に運動情報の処理機構が関係しているとの新たな仮説を立て、このことを1つの刺激に複数の見え方が存在する多義的刺激の知覚特性の研究から検証した。本年度は特に、左右眼に異なる刺激を呈示したときに左右眼刺激間での知覚の入れ替わりが生じる視野闘争事態への運動情報が視知覚の安定化に及ぼす影響について検討した。 実験手続きとしては、視野闘争を生じる刺激の周囲を取り巻くようにランダム・ドットで構成されたリング状のノイズ刺激を呈示し、そのノイズ刺激を時間経過とともに入れ替えることで動的な変化を引き起こした。その動的なノイズ刺激の有無、また、そのノイズ刺激のタイプによって視野闘争刺激の一方の眼の刺激が知覚される時間が影響されるか検討した。実験の結果、以下の結果が得られた。知覚時間は動的なノイズ刺激の呈示によって、静止したノイズ刺激、ノイズ刺激を呈示しないときよりも長くなった。また、両眼に動的ノイズ刺激を呈示した場合よりも左右眼に交互に呈示した場合の方が知覚時間を延ばす効果が強かった。知覚状態に同期させて動的ノイズ刺激を呈示した場合、動的ノイズと同期した知覚状態の知覚時間が長くなった。このような知覚時間の延伸を引き起こす最適な動的ノイズ刺激の時間周波数や両眼間でのランダム・ドットの相関の程度などについても継続的に実験を行い検討している。 本年度までの結論としては、視野闘争事態では周囲の動的ノイズによって、現在の知覚状態が維持されやすくなることがわかった。このことは、現実場面において左右眼で不一致となり視野闘争が生じうる条件においても視野闘争が生じない理由として、周囲の運動情報によって知覚が維持されるために視野闘争生起が抑制され視知覚の安定化がなされている可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度当初の実験の開始が遅れてしまい、当該年度では研究成果として発表が可能となるまで実験データを集めることができなかった。しかし、現在は実験計画も順調に進んでいる状態にある。
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Strategy for Future Research Activity |
現状では、視野闘争時において動的刺激によって一方の眼の刺激の知覚が維持されることはわかっているが、それが比較的低次な左眼か右眼かといった一方の眼の刺激の知覚のみに影響するのか、それとも、より高次な刺激の表象を維持しているのかわかっていない。このため、両眼間でグルーピングした知覚や誤結合された知覚が動的ノイズ刺激によって延伸されるかを検討することで動的な刺激が高次な刺激の表象の維持に影響しているのかを検討し、知覚状態の維持への運動情報の影響についてモデル化を試みる。また、本年度の研究により視野闘争時には動的ノイズ刺激により知覚状態が維持されることは明らかになっているが、一般的な多義図形刺激においてそれが生起するかはわからない。動的ノイズ刺激による知覚状態維持への影響は視野闘争事態のみに特有の可能性があるため、視野闘争と多義図形刺激観察時の知覚状態維持・安定化への運動情報の影響に違いがあるのかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度予算において、実験機器等は充足したため、主に実験を遂行する上での実験参加者への謝金や、成果公表のための誌上発表の費用・学会等への参加費用として使用する。
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