2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730718
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
和田 有史 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所・食品機能研究領域, 主任研究員 (30366546)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 感覚・知覚 / 食認知 |
Research Abstract |
口腔内における触覚による大きさ知覚と視覚による大きさ知覚に違いがあるかどうかを検証するために、心理物理学的な実験を行った。また、口腔内の知覚の特徴を明らかにするため、他の身体部位として指先での触覚による大きさ知覚との比較を行った。 実験は5つ行った。 実験1では、飴の大きさを評定対象として口腔内の大きさ評定と視覚的な大きさ評定とが一致するかどうか検討した。実験2では、飴にあけた穴の大きさを評定対象として、口腔内の大きさ評定と視覚的な大きさ評定が一致するかどうか検討した。実験3では、口腔外での舌先触覚での大きさ評定と視覚的な大きさ評定が一致するかどうか検討した。実験4では、視覚の評定対象の違いによる影響を検討した。実験5では、舌先触覚と指先触覚での穴の大きさの検出閾を測定した。 これらの実験の結果、口腔内触覚において、視覚や指先での触覚よりも物体が大きく知覚される傾向があることを示唆された。 また、食感に関連する触覚的な物性の判断を、視覚的にどのように感じるのかについても研究を行った。ネオンカラー拡散をともなう主観的な面の頂点を支点とした振り子運動の位相差を操作し、誘導図形間の振り子運動の位相差が知覚される面の素材感の判断に及ぼす影響を検討した。この実験では、上下の誘導図形間の振り子運動の位相差を0°から180°まで段階的に変化させ、位相差が0°及び180°の条件下では対象の変形しない剛体の主観的な面の運動が、それ以外の位相差条件では面の変形を伴う非剛体の面の運動が知覚される確率が高いことを示した。この結果は視覚的な運動の位相差が視覚的な物体の物性判断に影響していることを示唆するものである。 これらの研究に関連して、査読付きの英文論文を3報出版し(1報は受理済み)、学会発表を8回行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔内における大きさ知覚と視覚・指先における触覚による大きさ知覚の比較に関しては、先行研究がほとんどなく、探索的に実験を行った。実験開始当初、実験刺激である飴自体の大きさを3段階設けて、その大きさの判断を各感覚モダリティで行ったが、その条件では大きさ判断の方略の個人差が大きく、申請者が意図するように課題を遂行することが困難であった。そこで飴に穴をあけてその大きさを判断する実験に切り替えた。この場合は脹脛の検出閾よりも刺激が大幅に小さくなってしまったため、脹脛での大きさ判断は不可能になった。しかし、視覚、示指、口腔内での判断の比較は可能であり、本来の目的である複数の感覚での大きさ知覚の比較をすることができた。その結果、口腔内での大きさ判断は、視覚による大きさ判断、指先による大きさ判断よりも過大評価される傾向を示すことができた。しかし、その過大評価の程度は予測していたよりも小さかった。 また、視覚による食感判断にかかわる質感視知覚に関する実験では、触覚的にも感じられる物性の判断が、物体の変形に伴う視覚的な運動の位相差が影響することを示した。変形運動の位相差は触覚的にも検出できることから、口腔内での物体認知と視覚での物体認知の共通項を探るうえで非常に有効な手がかりであるといえる。 このように、実験計画の変更はあったが視覚および指先、口腔内での触覚による大きさ知覚の比較を予定通り遂行した。さらに、視覚による触感的な物性判断に関する知見も見出した。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、口腔内で知覚した大きさと、他の感覚で知覚した大きさとを直接比較し、判断するパラダイムで実験する。これにより、口腔内での大きさの印象をより直接的に比較することが可能になると考えている。また、嗅覚や温度感覚が大きさ知覚に与える影響を検討する。さらに、視覚による質感判断に関しては、口腔内で知覚するテクスチャー知覚との関連性を精査する。 これらの研究の結果を学会および国際誌上で発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり使用する。なお、次年度使用額661,580円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。 具体的には実験およびデータ整理を補助する人員を1名雇用する(1,500,000円)。実験に使用する飴、香料などの消耗品を購入する(100,000円)。実験参加者(50名)の謝金を支出する(250,000円)。また、学会発表の旅費および参加費(150,000円)、英文校正にかかる費用(80,000円)を支出する。
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Research Products
(12 results)