2011 Fiscal Year Research-status Report
学生の学習到達度を適切に評価する自律的な内部質保証の構築―イギリスを参考に
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23730721
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
田中 正弘 弘前大学, 21世紀教育センター, 准教授 (30423362)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 成績評価 / 内部質保証 / 学外試験委員 / 国際情報交流 / イギリス |
Research Abstract |
イギリス高等教育における成績評価の内部質保証制度に関する先行研究を分析し,その成果を日本高等教育学会第14回大会(2011年5月29日,名城大学)および日本比較教育学会第47回大会(2011年6月25日,早稲田大学)でそれぞれ発表した。また,この内容を発展させて日本の現状分析に照らし合わせた成果を,社会貢献もかねて,日本学術会議法学分野の参照基準検討分科会において招待講演を行っている(2011年5月30日)。同様に,地域貢献もかねて,青森中央短期大学のFD研修会における招待講演(2012年2月23日)でも活用した。その内容とは,具体的に,成績評価基準の明確化と成績分布のガイドライン作成,および成績評価結果を同僚の間で相互に点検する重要性と第三者の参画の必要性などである。2012年2月には,オックスフォード大学での現地調査を行い,一次資料の収集と現地の教員との面談を通して,教員に多大な負担が掛かるのにもかかわらず,丁寧な成績評価の点検制度を運用し続けられる要因の一つを発見した。その要因はとても単純なことだが,科目や試験の数が日本と比べてかなり少ないことである。そこで,大学のカリキュラムに着目し,具体的な内容の考察を実施した。この現地調査の研究成果は,日本高等教育学会(2012年6月2日,東京大学)と日本比較教育学会(2012年6月15日,九州大学)で,それぞれ異なる観点から報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究期間内に明らかにしたいことの四つのうちの二つ,「(1)大学教育の質保証に対する外部試験委員制度の効果や経済的効率性,および制度運営上の問題点やその影響について」,「(2)外部試験委員による改善勧告の具体的な事例と,大学側の対応(対応組織)について」に関する実例を現地調査で詳細に分析できたこと,かつ,その分析成果として,日英の大学のカリキュラムの差違に着目するという新たな研究の視点を得られたことがある。このカリキュラムの考察が,明らかにしたいことの三つ目「(3)イギリスと日本の間の文化的・制度的な差違を考慮して,イギリスの制度を輸入する際にどのような修正が必要となるか」の理解につながると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査の成果を日本高等教育学会(2012年6月2日,東京大学)と日本比較教育学会(2012年6月15日,九州大学)で発表し,そこで得られた有意な意見を反映しつつ,2013年1月に再度渡英し,大学の規模に応じて何名の教職員が学外試験委員として何日掛けて,どれくらいのデータを参照し,どの程度の改善勧告をすべきなのか,あるいは教員の負担感はどの程度なのか,特定の教員に負荷が集中していないかなどについて,より掘り下げた聞き取り調査を行う。加えて,学外試験委員の報告書がどの程度活用されているかについても調べる。それから,可能であれば,イギリス高等教育学会で,日本との比較の観点から発表を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は主に,6月に開催される二つの学会発表のための国内旅費と,イギリス現地調査のための海外旅費として使用する。また,一次資料の収集に必要な英文図書の購入も引き続き行う。なお,昨年度から繰り越した研究費は25千円程度となった。
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