2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本における養護教諭制度の成立と保健室機能の変容-キュアからケアへ-
Project/Area Number |
23730725
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
七木田 文彦 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (40431697)
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Keywords | 養護訓導設置計画 / ケア / 学校看護婦 |
Research Abstract |
平成25年度は、平成23年度、平成24年度の史料収集作業を継続し、戦前期・戦時下史料・戦後教育史料を体系的に収集した。これと並行して戦時下史料について重田定正文書を中心に史料整理と史料読解を進め、前年度に考察した「戦時下文部省の養護訓導設置計画案」についての全容と詳細を分析した。特に、キュアを中心とした学校看護婦からケアを中心とした養護訓導への職務変化の議論は、戦時下の環境的変化に後押しされながら文部行政官、ならびに帝国学校衛生会関係者の議論を経ながら制度として成立したプロセスを当時の社会構造と共に明らかにした。1941(昭和16)年の養護訓導の誕生に伴っての全国的展開は、養護訓導は判任官待遇であって養護訓導の全国設置状況を個人の辞令を確認しながら実証を行い、史的事実として一定の成果を得ることができた。学校看護婦から養護訓導への職務変化は、教育職員の全国的配置を念頭に置いて制度的成立として一定の到達点に達したが、学校看護婦時代の実践を分析するならば、当時の実践の中にも教育職員としての視点と個々の葛藤の中で編まれた実践にその萌芽形態を見ることができる。さらに、こうした視点は、学校における衛生室空間の質的変容が見られたことによっても確認できる。衛生室空間の変化は、日本社会の経済的状況よりダイレクトに影響を受け、学校医・学校歯科医による治療から学校看護婦による予防へと変化した。これは衛生室空間の物品を予防によって補うための政策的戦略であったことと同時に、学校看護婦の職務を教育的視点へと変化させ、養護訓導の制度的支柱を形成したと言える。しかしながら、養護訓導設置の全国的設置は予想とは反して進まず、戦後教育改革期においても棚上げされながら今日に至っていることを史料によって裏付けながら確認した。
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Research Products
(2 results)