2011 Fiscal Year Research-status Report
多文化社会におけるシティズンシップ教育と道徳教育:リベラリズム教育哲学の立場から
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23730730
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片山 勝茂 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10450008)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | シティズンシップ教育 / 道徳教育 / 正義 / ケア |
Research Abstract |
平成23年度は、教育哲学会第54回大会における研究討議「教育における正義とケア」における報告に向けて、教育における正義とケアのかかわりの基本的構図を明らかにする研究を行った。まず、原理的なレベルで、教育における正義の概念とケアの概念とのかかわりは、教育のどの領域における、どの問題を取り上げ、どのような判断や主張をするかに応じて異なってくることを、教育哲学者のネル・ノディングズの議論に言及しながら明らかにした。次に、本音で話し合える雰囲気や人間関係をつくるという道徳教育の基本においては、正義の姿勢とケアの姿勢は表裏一体となっており、道徳教育において正義とケアの両方のスキルを育成することが必要であることを明らかにした。そして、多文化社会における正義とケアにかかわる問題として、マイノリティーの文化やアイデンティティをどのように扱うべきかという難しい問題があることを指摘した。その上で、多様な文化やアイデンティティへの理解を深め、寛容と相互尊重の精神を育成するとともに、(ピアスの是非といった)学校における多文化共生の在り方について議論し、合意形成を図っていくことをシティズンシップ教育として位置づけることを提案した。さらに、日本文化の中では不道徳な行為をうやむやのままに許すことが多く、それが他者に対する思いやり(ケア)ととらえられるという議論を批判的に検討した。 現在、報告の内容を教育哲学会の学会誌『教育哲学研究』にて発表すべく準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教育哲学会の研究討議「教育における正義とケア」に合わせて、研究課題のうち特に関連する部分の研究を進め、研究討議での報告・指定討論者との討論・研究討議参加者との質疑応答を行うとともに、学会誌での発表を準備しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、特にシティズンシップ教育および道徳教育を通じて徳を育成することに対する反対論を検討し、シティズンシップ教育と道徳教育の限界を明らかにする研究に取り組む予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は外国での調査研究ができなかったため、平成24年度は外国での調査研究もしくは学会発表を行う予定である。また、政治哲学・シティズンシップ教育・道徳教育関連資料・図書を購入するとともに、国内の学会への参加、助言・専門的知識の提供への謝金等を予定している。
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