2011 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の婦人教育政策におけるジェンダー・ポリティクス
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23730737
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
羽田野 慶子 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (50415353)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 婦人教育 / 社会教育 / ジェンダー |
Research Abstract |
本年度は、第一に、婦人教育政策の歴史に関する先行研究の収集・整理を進めた。先駆的なものとして千野陽一による歴史研究、続いて代表的なものとして、日本社会教育学会編『日本の社会教育』第26集所収の西村由美子(1982)、同じく第45集所収の上村千賀子、中藤洋子、矢口徹也、相庭和彦の各論文(2001)をはじめ、女性問題学習に関する村田晶子の研究(2006他)、また、戦後の婦人教育政策の前史として、戦前期の青年女子教育を対象とした渡邊洋子(1997)、矢口徹也(2008)らの歴史研究など社会教育学領域の研究群、および社会教育行政の立場から書かれた日高幸男、志熊敦子らの論考の整理を行うとともに、戦後の女性政策を通史的に分析した横山文野(2002)、神崎智子(2009)、占領期の婦人教育・婦人政策を扱った岡原都(2007)、豊田真穂(2007)、上村千賀子(2007)、さらに田代美江子(1992他)、小野沢あかね(2010)らの純潔教育・性教育に関わる歴史研究など、近接領域の研究を整理した。 第二に、文部省社会教育局刊行の婦人教育・家庭教育・純潔教育に関する行政文書の収集を行った。戦後、社会教育局による婦人教育政策文書としては、『婦人教育資料』(1952-59)、『婦人教育の現状』(1960-69)など婦人教育全般に関する各年度資料、『婦人教育15年の歩み : 文部省行改事務の上からみて』(1961)『婦人教育行政年表』(1977)など一定期間の政策の展開をまとめたもののほか、『家庭教育に関する施策の現状』(1964-69)など家庭教育に関する基礎資料、『社会教育における純潔教育の概況』(1967)など純潔教育に関する基礎資料が存在する。1945年から1977年の国立婦人教育会館設立までの社会教育局婦人教育課の刊行文書の収集・整理を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
婦人教育政策の歴史に関する先行研究の収集・整理については予定通り進めることができた。 戦後婦人教育行政文書の収集に関しては、リスト化の作業をほぼ終了し、所蔵図書館での現物閲覧・確認の作業に移っているが、国立女性教育会館女性情報センター所蔵の資料閲覧が出張期間の時間的制約のために遅れ、その部分の確認作業が24年度にずれこんでいる。当初予定していた基礎資料集の作成について、24年度夏を目途に鋭意作業中である。 以上の文書閲覧を通して、当初は第3年度に行う予定であった婦人教育の実践記録分析に関して、重要な資料をいくつか確認することができたため、それらに関しては一部前倒しで分析作業を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)国立婦人教育会館設置に関する行政文書の閲覧・分析:1977年の国立婦人教育会館の設置に関する行政文書は、現在、国立女性教育会館女性アーカイブセンターに所蔵されている。これらを閲覧・分析し、設置をめぐる具体的な議論の内容、設置を求める諸勢力(行政組織内の力学、女性団体の要望の内実、フェミニスト研究者らの意図など)の布置関係を明らかにし、NWEC設立をめぐるポリティクスの解明を試みる。(2)婦人教育行政に関わった政治家、研究者、社会運動家等の言説の収集・分析:上記(1)と並行し、婦人教育行政に関わる政治家、研究者、社会運動家等の言説を収集・分析し、婦人教育課の設置とその後の政策、NWEC設立とその後の事業展開をめぐるジェンダー・ポリティクスの解明を進める。(3)婦人教育課OG、NWEC設立関係者およびOBOG職員への聞き取り調査:前年度に行う行政文書、NWEC設立関係文書、婦人教育政策に関する先行研究の整理・分析をふまえ、社会教育局婦人教育課に在籍したOG、NWEC設立に関与した人々、NWEC設立当時のOBOG職員を対象とした聞き取り調査を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国立女性教育会館女性教育情報センターおよび女性アーカイブセンター所蔵の婦人教育政策に関する行政文書の閲覧をすすめるため、当該施設訪問のための旅費を使用する。一部の文書については、東京大学教育学部図書館および筑波大学総合図書館にて閲覧を進める。以上の作業を通じて、婦人教育政策行政文書基礎資料集を作成する(その他:印刷・製本)。また、婦人教育行政関係者への聞き取り調査において、旅費、謝金、および記録等に必要な物品費を使用する。その他、関連する知見の収集のため、社会教育、社会政策、女性学等、関連学会等へ参加する(旅費)。
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